ちょっと前に友人から貰ったビデオカード。ヒートシンクを別のカードに流用したため不要になったとの事。何の変哲も無いnVIDIAリファレンス準拠のGeForce4MX440のカードだが有り難く頂いた。なおMSI製ではなくCREATIVEのOEMである。

 今までボード上にスイッチングレギュレータが載ったビデオカードを弄ったことが無かった(全部ケースに入れて使用しているため)。そのためどの部分にどんな電圧が掛かっているのかよく分らない。この時代に何とも情けない話だが、ゲームをやらないことからビデオカードには全く興味が無かったので仕方が無い。


★Vcore1.5V
 旧世代CPU用に設計されたIRU3033を中心にした、旧式のマザーボードの電源部に匹敵する構成の(Non-Synchronous)DC-DCコンバータである。但しスイッチング周波数は124kHzとかなり低く、定常時のリプル(静的リプル)が60mV弱と大きい。なおスイッチング周波数は自動的に決まってしまうので、ユーザーが自由に変えることは出来ない。このコントローラ採用によって、後の改造に大きな制約が出てしまった。

 設計値の推定を行なってみる。三洋のOS-CONアプリケーションノートの計算によると、Vripple/((Vin-Vout)/L*Vout/Vin/Fosc)であるから、

Vripple
10mV=ESR< 7.1mΩ
20mV=ESR<14.2mΩ
30mV=ESR<21.4mΩ
40mV=ESR<28.5mΩ
50mV=ESR<35.6mΩ
60mV=ESR<42.7mΩ

 となる。出力コンデンサは三洋CE-AX1500μF6.3V(90mΩ)×2なので、このレギュレータが50〜60mVで設計されている(らしい)事が判る。実測とほぼ一致しているので、コンデンサ自体の劣化は殆ど無いものと思われる。筆者としては元々の設計値が気に入らないが、恐らくリプルより過渡特性を重視しているのだろう。さあこれでも交換するか?

 他で気づくのはL600が省略されていること。これは元電源3.3Vにおつり(HSDL用語)を返さないために重要な入力コイルである。ここには5A以上流せる2μHのインダクタが必要だ(追加したら裏面のR606、R607、R608は忘れず除去する)。これで3.3Vの電源のノイズ汚染が減る。BH6やWS440BXのような、Vmemに3.3V直流しをしている低級機種では見逃せない影響がある。また自身のVmemも3.3Vから生成してるわけだから、ビデオメモリに対するノイズ防止にも効果があるかもしれない。
vcore
 電源部のコンデンサは三洋で固められている。黒いのが低ESRのCE-AXで、緑色なのが固体電解に迫る高性能ながらマイナーなEPcap(知ってる?)ことCV-EXである。これは固体と電解液タイプのハイブリット電解コンである。もし売れないのならアキバに流してくれないかな〜?とりあえず緑の奴は交換の必要は無い。


iru3033
 Q600はSO-8だがICではなくFDS4410というパワーMOS-FETで、これがスイッチングデバイスだ。D601はDIODESのB320という3AのショットキーDiで、これが整流デバイスとなる。この本格的な構成は、とりもなおさず低電圧大電流であることを表している。レギュレータICの時代とは消費電力が違いすぎる。出力電圧は1.5Vで、マザーボード上の1.5Vは使用していない。AGP1.0との互換性は保たれているわけだ。

 今回は電源部の全回路を完璧に書こうと思ったのだが、裏面にでかいシールが張ってあったのでアッサリと挫折した。数値が分らないのは推定で書いているため。でもこんな風に実回路から回路図を起こしていくと理解が深まるので、回路の理解を深めたい方には是非お勧めする。学生さんで暇があるなら全回路を起こしてもいい。
circuit
 部品間隔が結構汚くなってしまった。これは最初はVmemとコアを別々に書いていたのを統合したため(言い訳その一)。元々部品がPPではないので、ある程度間隔がマチマチなのは仕方が無い(言い訳その二)。


★Vmem2.5V
vmem
 Q601はDDR-SDRAMの2.5Vを生成している。コントロールはIRU3033が行なう。タダのシリーズドロッパーである。C641は無くてもいいが埋めたい(100μF)。出力コンデンサC627は三洋GX、松下FA、ニチコンPLクラスが指定されており、「50〜100mΩ、500〜1000μFのキャパシタを使え」と書いてある。ロードレギュレーションの改善のため、低インピーダンスの高性能なコンデンサを付けることはできない。これはやらない方が良いというレベルではなく不可能レベル。無理に付けても発振するか不安定になるのが関の山。スペース的に容量に頼ることも出来ないし非常に困ったことになった。

 いつもコンデンサを買う時はできる限り低インピーダンスの物を買うようにしているのだが、古い物を弄る場合には程々の奴も必要だということが分る。手持ちではチビデブのルビコンZL470μF16V(53mΩ)の出番だろうが、ここに通常のラジアルリードの電解コンを載せると何ともカッコ悪い(リードタイプも使える基板設計にはなっている)。容量も大幅に減ってしまうし、他人の物件の修理以外では選びたくない選択肢だ。レギュレータIC載せ換えも内蔵ゆえに出来ない。

 で考えてみるのだが、ここに大容量の電解コンが本当に必要なのだろうか。データシートのアプリケーションノートはマザーボードに適用した場合の例である。今回はビデオカードのDDR2.5Vのケースで、一概に500μF以上が必要とは思えない。精々数百kHzのスイッチングレギュレータとは違ってシリーズレギュレータは速いので、もっと小容量でもいけるんじゃないだろうか。例えば手持ちでは三洋TPC220μFとか。これなら45mΩと程々なので発振の心配は無い(注)。

 迷うとキリがないので、とりあえずC641を追加してC643を換えてみて、それで変化が出なければC627も換えてみよう。出来れば液体電解は全て無くしたいのだが。


注:VFB2の所で位相補償をやればもっと低インピーダンスに出来るかもしれないが、こんな所で位相補償をやっていると泣けてくるのでやらない。


mem_dc
 これはVmem2.5Vのデカップリング。物は100μF16Vの一般用(松下?)である。耐圧16Vには全く意味は無いので、2.5Vに耐えられるコンデンサなら何でも使える。横に付いている0ΩのR618、R620、R622、R624には意味があり、無闇に除去してはいけない。


others
 変える必要は無いけど通常電解は除去したいので交換する。C602(C603)はスペースの関係で付けられる奴は限定される。ここはリードタイプも使えるが、修理じゃないから液電解では無意味。多分ニチコンF95の100μF6.3Vを使う。C525はタンタルの耐圧10V以上を使用するだろう。これらは裏に付いている1117の入出力だ。C605は何だか良く分からないので(2Vって何?)埋めたいけど放置。



 さて調査&プランニングが終わったわけだが、全く劣化してないので部品交換する意欲が失せてきた。実際はこうやって解析している時が一番楽しい(筆者は基板を眺めているだけで一日潰せる)。とりあえず省略分を付けてみよう。その前に洗濯する必要があるな。これは簡単そうだし…。


 終わんなかったので途中で上げちゃいました。