PC Chips製なのでHSDLではおなじみのエリートグループという事になる。この製品は単体マザーではなくベアボーンPC搭載のマザーである。しかし製品販売終了頃から単体ジャンクでも広く出回った。インターネット検索すれば解るが、日本だけでなくワールドワイドな人気物件と言える。確かに完成形のPCは、ケース嫌いの筆者であってもコンパクトで魅力を感じる。詳しい概要は専門のページに譲るとして、その中身のマザーボードはどうだろうか。
http://hem.passagen.se/cugi/familynet/
http://park7.wakwak.com/~madlab/kaizou/hm_case/bki810m.html
http://sites.google.com/site/herman543/bookpcgetsbigpowersupply2
http://www.dieen.net/pc/pc_update49.html
http://www.osu.ac.jp/~tanaka/bki810/index.html
http://www.tadachi-net.com/desktop_pc/bki810/


bki810_v16
 スリムPCに使われていたi810マザーで、仕様自体は特に変わったところの無い、ごく普通のマザーと言えなくも無い。しかしボード上をよく見れば解るがなかなか怪しい構成になっている。解析の結果は期待以上の「斬新な珍マザー」だった。

 ボード上を見れば分るが、この小さな板にアルミ非固体電解コンデンサ(以下アルミ電解)が大量に載っている。全部で何と50本!これはボード上アルミ電解密度?(^^; では過去最高・空前絶後と言える。一つだけフィルムコンが見えるが、マザーボード上でマイラの姿を見るのも新鮮な感じがする。筆者に言わせればこのマザーは無駄だらけ。無駄を省けば全部日本メーカー製コンデンサを使ってもこれと同等の価格で作れるのではないか?

 必要なものは全てボード上にある。BKi810の完成写真を見たところモデムライザーがあるようだが、それ以外に必要な物は無い。PCIバス・スロットも無いし拡張性ゼロ。USBにストレージデバイスを繋ぐ位か?もっともUSB1.1だけど…。


bki810_v16r
 基板裏。裏面には部品は全く実装されていない。但し非常にアマチュアっぽいパッチがある。これは何か?実はコネクタケーブルで繋いでいたのをジャンパに替えたようだ。強度的に見れば表に持ってきた方が良くないか?まあ製造から言わせれば「この方が作業が簡単だから」なのだろう。


rear_panel
 リアパネルはシリアルが存在しないが他は普通のATX仕様。唯一コンポジットやS-VHS端子等のビデオ出力が目を引く。


bki810_vrm
 VRMコントローラが存在しない。ATX電源ではおなじみのPWMコントローラKA7500Bを使ったディスクリート電源なのだ。これはECSのSocketAマザーでも見られたが、この時点でVRMの電圧安定性とか語るのは止めた。更にそれより驚いたのは12Vソースなのだ。P6一般用マザーでは通常5Vソースで、少なくともHSDLには12VソースのP6マザーは無い。VRM入力コンデンサが耐圧16Vなのはリプル耐性を増やすためではなかったんだね。何故12Vソースなのか。実はこのマザーはSB5Vを除けば12Vしか電源が供給されないから。

 スイッチ部分は上側がCEB6030L、下側はSBDのS16S40Cである。デバイスの仕様からこのVRMは16Aが限界という事になる。勿論これは仕様上の話で「これを超えると即壊れる」という最大値だから、この電流を普通に流し続けられるわけではない。電源別供給の下駄を使わないと河童1GHz以上や鱈は無理。なおもう1枚の方は上側が2SK3296だった。写真で見たところV3.3では下側が20AのSBDに変更、V7.3では同期整流に大幅変更している。全くの別物なので、V1.6で真似して河童高クロックを載せてはいけない。

 アルミ電解はエリート系らしく、パッチ用の不明品以外は全てG-Luxonである。VRM出力がおなじみLZ1500μF6.3V×5+LZ1000μF6.3V×2だ。1000μF6.3V×2の方は反対側で離れているので最初はVcore出力用とは分らなかった(EC21,22)。

 VRM入力は何と一般用105℃品のSM1000μF16V×2である。12VソースのP6マザーだからこれでいい…わけはない。ただでさえ2本しかないのだから。これはP!!!700を超えたらお亡くなりになる可能性が高い。C220,221,222(MLCC1〜4.7μF×3)で補強しているが…。入力コイルは存在せずに2エレメントのFBで済ませている。これだと12Vラインにおつりをぶち撒く事になるだろうが、元々AT・ATX共に12Vは回路用というよりはモーター等の動力用が殆どだ。他の回路が「生」で使う事は無いので問題無いと言えば無い。


ka7500b
 PWMコントローラはおなじみTL494互換のKA7500Bである。妙なパッチがなされている。もう1枚の方はKA7500Bのパッチは無い。スイッチング周波数は195kHzと意外に周波数が高いので驚く。TL494やμPC494まで含めても、これ系の石の適用例でこれほど高い製品は見た事が無い。でも長年動物電源でこれ系を弄ってきた経験からすると、この石は110kHz辺りが一番良くなり、それより高くしても全く良くならなかった。もっとも動物電源はチョッパ型ではないし、スイッチもバイポーラTRなのでその点で違いはあるかもしれないが。


vrm_circuit
 これがスイッチング回路。KA7500BとCET6030Lの間にPNP一石のドライバ兼ゲートチャージ抜き回路をかましている。12Vソースの非同期整流という事で変換効率は良くない。VRMコントローラを汎用に変えてもコストは殆ど変わりない筈だが何故だろう。VID取得回路や、別に1.5、2.5、3.3のレギュレータを用意しなくてはいけないなど、百害あって一利無しと思う。他の部品と比べて入手性も変わらないし…何でだろう?やはり設計のじーさんが使い慣れてるという低レベルの理由じゃないだろうか。

 VIDの設定法についてはここで解析している人が居るので筆者はやらない。かなりアナログ的な設定法っぽい。悪く言えばテキトー。

 ちなみにパッチの詳細は、4Pin(デッドタイム・コントロール)が直グラウンドに落ちていたのを脚上げして、代わりに100kΩ(10%)で7Pin(グラウンド)に接続している。1μFの方はプラス側が14Pin(Vref)に、マイナス側が先程の4Pinに繋がっている。


cpu_dc
 CPU_DCはよくやっている。今まで見たエリートグループのマザーで、多分初めての合格?マザーだと思う。ソケット内の3216と2012は全てCPUのVcore用DCである。P6マザー全体で見ても中の上といった所(前回のGA-6OXM7Eと比べてみれば解る)。CPU温度はサーミスタで測るタイプ。なおC213はクロックラインに繋がっているので付けてはいけない。

 その反面Vtt1.5の扱いは非常に悪い。ソケット周りの細い線がそれだが、見た目でもラインがかなり細いしDCも不充分だと思う。これは信号系なので性能や安定性に直接結びつく。もう少し何とかしたいが基板パターンは後から太くできないからなあ。良いマザーボード選択のヒントがここにある。


ics9248_73
 クロックジェネレータICはICSの9248-73である。CPUは66〜150MHzまで、メモリクロックは90〜150MHzまで可変できる。ソコソコ範囲は広いが肝心のi810が付いて来ないのだった。なお810Eの解説に「FSB133に対応した」と書いてあるけど、この無印でもFSB133は使える。勿論CPUだけでなくメモリクロックも133MHzになる。勿論CPUが動作すればの話だが。


bki810_bios
 何の変哲もないAWARD製BIOSである。変なオリジナルBIOSを使われると本当に苦労する。具体的に言えばAcerやCompacの事ですm9(^^) ちなみにシールを剥がしたらチップのシルク印刷が消えてしまった。有名一流メーカー製ではないことは間違いない。BIOSイメージの大きさから見て4MBのフラッシュROMだ。


ide_fdd_if
 これは困った。FDDがあるのは良いけど、IDEインターフェイスはプライマリしか用意されていない。他に要らない物が一杯あるのに何でこれを省略するのか。まあ動いたところでICH0だが…せめてICH1くらい付けてくれよ。PCIバス・スロットにIDEカードを差す事もできないわけだし。これならセカンダリが壊れて捨てる気になっているSAHARA3810の方がマシなような気がしてきた。


it8870f_a
 SuperI/O+プローブチップはこれ。但し温度は全てサーミスタで測っている模様。サーマルダイオードだと何か問題があるのだろうか。もっとも90年代はサーマルダイオード計測は一般的ではなかったな。


 LANはDAVICOM DM9102F。ひと頃はよく見かけたが、今世紀に入ってからは全く見かけなくなった。Ver3.3ではSiS900に、それ以降はRTL8139に変わっているらしい。

 サウンドはCMI8738PCI。可も無し不可も無い標準的なチップ。安いマザーにはこれが必ず載っていたところを見ると価格が安いのだろうか。モデムも入っているが、リソースを食うだけで邪魔なので切り捨てたい。

 Video出力用にCH7007A-Tという知らないチップが載っている。そういえばリアパネルにビデオ出力があったな。こんなものは付いていても不具合を増やすだけで嬉しくもなんとも無い。ビデオ出力には810の能力が不足だし、テキストはTVの解像度が低くてVGAでしか使えない。


★もう1枚との違い
 2枚手に入れたこのマザーだが、もう1枚のBKi810(同リヴィジョン)とは違った部分がある。

1.VRM上側スイッチが2SK3296である
2.KA7500Bのパッチが無い
3.代わりにパラレル付近に妙な一石のパッチがある
4.VRM出力インダクタ・コアがT50-52ではなくT50-52B
5.VRM出力インダクタ巻き線が#17ではなく#18

 気づいたのはだいたいこんな感じ。パッチの状況から見て、当該製品の方が微妙に新しいと思われる。製造番号は500番弱新しいが、製造番号シールを貼る人とPatchを当てる人は違うので順番とは限らない。BKi810には幾つマイナーバージョンがあるのか見当もつかない。こうなるとVer3.xや7.xの方も見たくなるね。Web上の写真はあまり精細なものは無いからなあ…。


★次回に続く
 と言うところで時間切れ。次回は無駄にシミュレーションでどのくらいまでいけるか確かめる。