続・古のマザー② BKi810(その1)
続・古のマザー② BKi810(その2)
PC Chips BKi810 もでφ(その0.1)
PC Chips BKi810 もでφ(その0.2)
PC Chips BKi810 もでφ(その0.3)
PC Chips BKi810 もでφ(その0.4)
PC Chips BKi810 もでφ(その0.5)
PC Chips BKi810 もでφ(その0.6)

 製造後11年も経って難癖付けられて改造されるBki810が気の毒になる(^^ 全8回の予定だったが、次にもっと興味を引くものが色々控えているので今回で連載打ち切りとなった。


★カツ入れ防止
 このマザーV1.6には強制FSB100ジャンパと言うのが有る。メンドシノセレロン専用のマザーなのでOC機能と呼んでいいだろう。

j10
 ちなみに(時期により?)実装されていない物もあるようだ。HSDLで入手した物はどれも実装されていますね。このJPの是非はまあ良いとして、このジャンパでFSB100にするとコア電圧が上がってしまう問題がある。勿論OC用にそういう仕様でやっているのだろう。だがその電圧が大雑把でよろしくない。河童だと壊れる可能性もある。

 具体的にはJ10付近のQ28を取り去る事でその機能は停止する。しかしTRを外すのは面倒なので安易に抵抗1本で済ませる。

odr
 このODR(オーバードライブR?)を取り去る事で機能は停止する。他回路には特に影響を与えていないようだ。やっぱりOCであってもノーマル電圧で使用したい。あ、しまったどの位電圧が上がるのか確認するのを忘れた…。


★Vtt1.5とVclk2.5のDC
vtt_vclk_dc
 マザーボードとして動作しないのにこれらをDCする必要があるのか。それは本番でこれを見ながらやれば確認の手間が省けるため。もしかしたら動くようになるかも?と言う淡い期待があったりもする⇒が動かなかった(^^ ちなみに左がVtt1.5で右がVclk2.5である。どちらも1μFのMLCCだ。他にもVtt1.5やVclkはあるが、ここは配線が繋がっているので効果が高いと判断した。


★スイッチング改良
 スイッチング波形のONの時に汚い波形になっていた。これはゲート波形の段階で既に発生しているというのは以前書いた通り。

d9a_wf1
 これがゲート波形だが、上がりかかった電圧が途中で一旦戻って、さらにそこでリンギングが発生している。これが典型的なMILLER EFFECT(注)ってヤツらしい。ゲートはVGS閾値まで反応しないから、これがスイッチング波形に直接反映する事は無い。実際問題として殆ど出ていないが、そもそも専用コントローラではこんなものは全く発生しないのだから気に入らない。

 解決策は増えた容量をものともしない位にゲート電源をローインピーダンスにすればよいのだろう(テキトー)。だがそれには回路構成自体を変更しないと効果的な改善は望めない。ソースフォロワとかにするんだろうな。それもメンドーでやってられないのでこの辺りの部品を交換して変化するか試してみよう。

 なおV7.xはスイッチングに関する改造は全く必要はない。KA7500BではなくVRM専用コントローラ(HIP6004B)が使われているからだ。V3.xは回路は同じだが、パターンが全く別物なので多少は違うかもしれない。この改造はV1.xに限って意味がある。

注:MIRROR EFFECTではない。MILLERは人名だ。カレントミラー回路とも関係ない(^^

★D9追加
d9a
 D9Aは何かよく解らない小信号ダイオードである。SBDだと思うが詳細は不明。これがリードアキシャルなのが昔から(と言っても一ヶ月少々だが^^)気に入らなかった。実は基板には面実装も使えるようにD9としてランドが用意されているのだ。コイツを交換したら波形が変わるんじゃないか?いやいや、それよりも並列の方がインピーダンスが下がるような気がしてきた。交換ではなくD9追加という形をとってみる。


d9
 このテキトーに外してきたダイオード、ホントにSBDなのかな?(^^; VFは0.6V位なんだけど…。


d9a_wf2
 MILLER EFFECTの汚さは特に変わっていない。ドライブ回路に根本的に回路に問題があるのだろう。しかしオーバーシュート気味にゆがんでいたのが綺麗な台形になっているので、全く効果が無いと言うわけではないらしい。とりあえずこのままで行ってみよう。


★C147交換
c147
 C147はKA7500Bのオープンコレクタ出力のコレクタ(ピン8と11)に繋がる電源を供給している。これがダメダメだと、CET6030Lのゲート電荷の供給が乱れるハズ。前回交換で一般用105℃品のKRE22μF16Vに交換したが、これを違う物に交換したら供給が安定するかもしれない。但し交換要員が日本ケミコンLXY82μF25V(ESR=350mΩ)なので殆ど変わらないかな。一瞬OS-CONを付けようと思ったが、土壇場でもったいなくなったので止めた。

lxy82
 LXYはオリジナルのSM10μF50Vより太いが、周囲に部品が無いので問題ない。LXYは色々なマザーに使ったが、愈々これが最後の1本である。オリジナルより容量は約8倍になったわけだが、実際にはあまり変わらないだろう。


★VGSカツ入れ、しかしここで力尽きる
 VGSを上げたらチャージが速くなるのではないかと思い(^^ VGSを10Vから上げてみようと思った。本当はD20を外すべきだろうが、3本脚を付け外しするのは面倒なのでショートした。データシートに拠ればCET6030LのAbsolute Maximum RatingsではVGSは±20Vとなっている。あまり温度が上がるとヤバイかも知れない。

 C147を交換してVGSを上げたら何故か逆にVGSが全く上がらなくなってしまった。元の電圧である10Vどころか5Vも行ってない。例のMILLER EFFECTで一旦下がるところから上がらずにそのまま横に移動してしまっているのだ。「おかしい、こんな筈ではない」と思っていたら、いきなり電源が落ちてしまった。慌ててパワーMOSFETを見るとドレインが紫色に変色しているではないか。テスターで当たったら殆ど全直間状態になっている。つまり死んだわけだ(^^;

cet6030l_yake
 VGS12V化をやる前からかなり温度が上がってさわれないくらいになっていたので、その時既に劣化は始まっていたのかもしれない。残念ながらここで強制的に実験は終了しなくてはならなくなった。事故直前の変な波形を保存し損ねたのが心残りだ。でもコイツのお陰でかなり実験が捗った。全く経験の無かったKA7500BのチョッパDC-DCのノウハウはかなり残した。前世紀のクソ古い石なので表立って使える技はないけど。

remove_mosfet
 一応外したけど修理の予定は無い。部品取りにもならないし捨てるしかないか。


★残された問題点
 Vtt1.5が実測で1.60V以上ある。規定では1.365~1.635V(1.50V±9%)である。昔どこだったか忘れたけど、この電圧を上げて実験していた人がいた。その結果はOC限界が下がったようだ…当たり前だわな。この電圧が高いと、

・長所
1.理論的にはノイズに強くなる
2.理論的にはON・OFFが速くなる

・短所
1.波形が汚くなる
2.CPUの発熱が大きくなる(重要)

 長所の方は「理論的に」というだけで実際の効果は皆無に等しい。デメリットの方が多いので上げる理由は無く、むしろ必要最小限まで下げるべき。Vtt=1.40~1.45V辺りが良さそうに思える。余談だが鱈不対応i815マザー等でピン折りやゲタで鱈セレを使っている人は、これを1.50V⇒1.25~1.30V程度に下げると発熱が減少するのでお勧め。三端子レギュレータ(Vref1.25V)採用機ならADJをGNDに落とすだけだから簡単だ。

 このVtt1.5を発生させている部分は全部取り替えたいくらいクソなんだよなあ。精度が出せないなら3Aのシリーズレギュレータでも載せてくれればいいのに。使えないのか使わないのか。


★終了
 連載終了に合わせて、文字通り「燃え尽きる」と言うのはなかなかドラマチックな展開だ(^^; まあパワーMOSFETが死んだだけで、CET6030Lは一杯あるから直そうと思えばすぐに直せる。しかしこのマザーは元々マザーボードとして動かないのだから、態々部品交換してまで直す義理は無いだろう。

 出来なかった実験、例えば出力コンデンサのグラウンディング等の改造は暇があったら別機でやるかもしれない。但し今は次の物件に目移りしてヤル気が無い(^^; 早くても来年になるだろう。