勘違いしている人もあるようですが、この記事は「動作しないPC」のトラブルシューティングではありません。この記事はPC用マザーボード「単体」の動作チェックです。両者は似ているようで全く違う作業です。

 勿論PCの修理に応用も可能ですが、その際にはPCをバラバラに解体できる程度のスキルは最低限必要です。バラバラに解体とは具体的に言って「ビデオカードなど全てのカードやドライブを外し、コネクタを全部抜くこと」です。バラバラにして元に戻せないレベルの人は修理は不可能なので、一切自分で弄らずそのまま修理に出してください。

 「○○と言うマザーが動かない」と言う質問が頻繁に来て面倒なのでマニュアル化しようと試みる。テキトーに書いたからまだ万全じゃない。気づいたら随時直す事にする。


=ジャンクマザー 初心者の為の動作チェックマニュアル=
Ver1.11

 まず動作チェックはケースに入れずにバラックでやる。これは常識。初心者はバラック動作が怖くて出来ない人が多い。筆者もそうだったのでよく分るが、ここらで童貞から脱出するためにもバラックで動かせるようになろう。ボード上の異音がよく聞こえるし、致命的破壊前に煙や炎の確認も出来るので都合がいい(^^; 一度出来るようになるとケースに入れるのが面倒になるくらい楽になる。

http://www.ainex.jp/products/km-01.htm
http://www.comon.co.jp/Z-SET.htm
 バラック動作の為には単体の電源と、上のようなスイッチを用意する。慣れてくればピンセットでチョイとショートしたりも出来るが、これを読んでいるアナタは初心者なのでスイッチを用意しよう。電子工作が得意な人は自分で作ればよい。以前紹介したPOSTCODEアダプタも用意したいところ。これを用意できなければ、前記スイッチセットに入っているブザーを付ける。またテスターを持っていなければ買う。高精度は特に必要ないのでP16やP10クラスでよいがアナログはインピーダンスが低いのでダメ。以上の道具はPCジャンカーなら必携の物。これからもジャンク道楽を続けるならばずっと使うので「持っていない」等という泣き言は聞かない。ちなみにジャンク道楽を続ける気の無い人はジャンクマザーを買ってはいけない。ジャンク品は格安の中古品とは違う事を忘れずに。本来ならばまともに動かない筈の物だ。これから動かしますけど(^^;

 最強の動作チェック環境とは、実は新品(又は正常品)とジャンクを両方買うことだったりする。こんな事を書くと身も蓋もないが、正常動作がどんなものかを知らなければ動作チェックは出来ないのは事実。初めてマザーを買うのにジャンク品を買うバカはいないだろうけど、これまでの経験だけがモノを言う世界なんだね。これに準ずるのはジャンクでも同じマザーを2枚買うこと。


①電源を入れる前に目視確認
 VRMのコンデンサが膨らんでないか?ICHに穴が開いていないか?パワーMOSFETが燃えていないか?ちなみにハンダが煮えているマザー(注1)は格安以外は買わない方がよい。死亡・不調確率が高いから。少なくとも目利きになるまではスルーする。目視確認の間はバックアップ電池(CR2032)は外しておく。その間にデータクリアするためだ。

・コンデンサが膨らんでいた
→他の部品が壊れる可能性があるので動かさずに交換する。

・パワーMOSFETが燃えていた
→動かしても無駄なので交換するか諦める。

・ICHに穴が開いていた
→i865等のICH5は欠陥品なのかよく燃える。燃えてたら捨てるしかないので買う時に死に物狂いでチェックするしかない。これに比べればコンデンサやMOSFET等どうでも良い。

・基板の割れ・配線切れのチェック
→買うときによく見た方がよい。袋に入って開けられない奴は賭けだな(^^ もっとも袋入りは動作確率が高い。大量入荷している物は更に動作確率が高く、未使用品の場合も多い。

注1:ハンダが煮えているとはこういう奴。パワーMOSFETの周りに茶色いのが浮いているのが分るだろう。これは壊れていなくてもOCで酷使されているか、バカユーザーに排熱不良のマシンで酷使されていたかだ。どちらの理由であっても初心者のうちは敬遠したい。


②さて動作チェックだが
 マザーボードに何も付けずに電源を入れる事から始まる。マザーにATX電源だけを繋いでスイッチを入れる。それで電源が入れば第一関門突破だ。電源が入るとATX電源のファンが回ったり、ボード上のLEDが点灯したりする。ここで躓くマザーは少ないだろう。

・ここで躓いた場合
→電源が不良、完全動作の電源を使っているか?どっちも動作未確認なんてバカな事はしない方が悩んでハゲずにすむよ(^^

→BIOSクリアージャンパをよく見ろ。間抜けた奴はクリアーの方になっている。こうなると電源は入らない。

→Intelブランド等一部のマザーは安全設計?でCPUを搭載しないと電源が入らないものがある。この場合は諦めて③に進む。

→サウスが死んでいると電源が入らないが、これは初心者には見分けが付かないだろうな。

 電源が入ったらATX電源の電圧をテスターで測る。3.3V、5V、SB5V、12Vである。マイナスは使わないので測らなくても良い。電圧は規格の±5%以内なら良い。合格したらATX電源の元スイッチ或いはコンセントを抜いて③に進む。


③次にCPUを取り付ける
 道具ではないので書かなかったが、CPUはそのマザーで動く中で最も古い奴を用意する。判らなければCPU対応表を見て最初期BIOSで対応している奴を用意する。これはかなり重要で、新しいBIOSしか対応していないCPUもあるのだ。ジャンカーなら各ソケットの中で一番古いCPUを手元に確保しておこう。少なくとも「起動しなければBIOSアップデートもできない」と言う事を忘れずに。できれば複数あると切り分けが出来てなお良い。

 次にCPUを取り付ける。そして同じように電源を入れる。電源が入ってCPUファンが回りだしたらVRM出力の電圧を測る(注2)。だいたいCPUの規定の電圧以上が出ていればOK。だいたいと書いたのは、元設定で5%近く多めに出す場合があるからだ。しかし+5%を大幅に超えたら異常なのですぐに電源を切った方が良い。だからバラックがいいんだよな。この時ブザーは付けておく。

 電源が入ったらメモリエラーのビープ音が鳴り出すはず。その音がしたらほぼ動作するマザーと見て間違いない。BIOSメーカーによって違うが、フェニックスアワードのビープ音は長音の繰り返し(ピーッ、ピーッ…以下同)。このあたりまで来るとPOSTCODEアダプタが威力を発揮する。これで正常なら電源を切って④へ。

・コア電圧が異常
→VRMが逝かれている、または対応していないCPUを付けている。対応表をよく見ろ。

・コア電圧が正常なのにビープが鳴らない
→CPUが動作していない。ちゃんと刺さっているか?接触不良は無いか?Slot1マザーは接触不良が恐ろしく多いので最低10回は差し直す(^^ 奥まで差せばいいというものではない。洗ったマザーもヤバイ。汚れたマザーは下手に洗うとピンが腐食する。動作チェック前に絶対に洗ってはいけない。もちろん接点復活スプレーなどは絶対に吹いてはいけない。動くモノも動かなくなってしまう。

→ICHが死んでいる。i865等のICH5は高確率で死ぬ。ICH4以前はあまり死なない。但しこの結論を出すのはまだ早い。なおPOSTCODE表示のLEDが点灯しないマザーがあった。これはサウスが死んでいる可能性が大。

→BIOSが飛んでいる。正常なBIOSに差し替える。初心者は直付けで差し替えられないマザーは買わない事。同じマザーを2枚買うと手軽にBIOS交換できるから便利。

注2:何処を測るか迷う場合が多いだろうが、一般的には出力インダクタから一番遠くの出力コンデンサの脚の部分で測る。その為には基板を立てた方が楽だね。何処を測るか分らなければ詳しい友人に聞こう。なお厳密な測定ではないので精度は気にしない事。そもそもDMMでは厳密なVcore測れないので、10mV台より下は何も気にしなくて良い。


★エージング処理
 ジャンク品なのにエージングって変?まあ堅い事は言わないで(^^ マザーが起動しない時、エージングによって復活する場合がかなりある。エージングと言う言葉は一部の非科学的オーディオヲタによって胡散臭い言葉に成り下がってしまったが、この場合は歴とした科学的な作業だ。やり方は至って簡単、動かないと諦めて捨てる前に試してみよう。

1.電圧処理
 マザー単体で電源を入れて1〜3時間放置。その後電源を外して、電源を入れた時間の3倍くらいの時間放置する。時間はそれほど厳密ではなくテキトーで良い。これをHSDLでは電圧エージングと呼んでいる。古いマザーにはかなり効果が高い。ジャンクではない長期保存マザーにもお勧め。昔から「ラジオやオーディオ機器などは定期的に電源を入れた方が良い」と言われていたが、あれもこのエージングの一種と言えよう。

2.温度処理
 特に真冬だが、電解コンデンサが寒さでボケている場合がある。日本製アルミ非固体電解コンデンサのカタログデータでは−10℃辺りで影響が出ているが、ジャンクの非固体アルミ電解コンデンサ(特に中華製)は10℃以下では能力を発揮できていない。この場合はマザー全体をドライヤーなどで60℃位に熱する。80℃以上だとダメージがあるし、40℃だと効果があまり無い。HSDLではこれを温度エージングと呼んでいる。

 温度処理で復活する場合も結構あるが、そのマザーのアルミ非固体電解コンデンサは既に寿命が来ている可能性が高い。暫く放っておくと元に戻ってしまうので、出来るならば全部交換しよう。細い物や小さいものは特に劣化しやすい。



④ここまで来たマザーはほぼイケル
 次にメモリを付ける。ATX電源もCPUもそうだが、当然メモリも正常動作が確認されているものだけを使う。電源を投入するとVGAエラーのビープ音が出るだろう。アワードだと長音1単音3(ピーピピピ)という音。これでこのマザーはほぼ動作していることになる。この検査は自信があれば⑤と一緒でも良い。このようにパーツを一つ一つ付けるのは、問題の切り分けと不運な巻き添え死を防ぐためだ。横着は事故の元、経験が長くなると分ってくる。

・VGAエラーが出ないでビープ音もしない
→メモリの不具合で固まっている→メモリスロットを変える、または別のメモリを使う。

→Vmemが正常に供給されていない。電圧を測る。

・依然としてメモリエラーが止まらない
→メモリ接触不良→常識でよく考えて何とかしろ(^^ メモリ接触不良の解決に接点復活剤を使ってはいけない。接点復活剤とはシリコンオイルと溶剤を混ぜただけのもので、それ自身には導電性はない。なので大量に付くと接点不良を起こす。ゴミも付きやすくなるし最悪だ。低電圧・低電流の信号系にこれを塗るなどクレージーとしか言いようがない。これは比較的高電圧の電源スイッチなどに使うものだ(接点にワイプ構造があるのが必須条件)。

→メモリを差す位置が悪い→スロットを変える、または別のメモリを使う。メモリには残念ながら相性と言うものがあり、動かない奴はとことん動かない。メモリはメーカーも多種必要なのだ。ジャンク道楽は意外に金がかかるのが分ってきたかな?

→メモリ周りの電解コンデンサが死んでいる。SDRではあまり無いが、DRDRAMのように壊れやすいのもある。


⑤VGAカードを差し、モニター、キーボードを繋ぐ
 この状態で正常にBIOSポスト画面が出るはずだ。直ぐにDELキーやF1キーを押してBIOSに入る。もちろんマニュアルは①より前に熟読しておくこと。マニュアルは慣れてくると見なくなるが、はまった時に意外な解決のヒントが隠されている場合がある。BIOS設定して保存されることを確認する。

・依然としてVGAエラーが止まらない
→ビデオカードがちゃんと差さっていない。或いは接触不良。その場合、差し直す前に電源を切る事。電源を入れたまま差し直すとショートして燃える場合がある。

・設定が保存されない
→CR2032電池は入ってるか?電圧は3V程度出ているか?

→ATX電源のコンセントを抜いたり、元スイッチを切らなければ電池は要らない。ATXマザーは規格でSB電源から供給される仕様になっている。HSDLではOSを入れる場合以外は電池を入れることは無い。だいたいが直ぐに倉庫行きなので付けておくともったいないから。


⑥メモリテスト
 ⑤で動作確認はされたが、MEMTESTでも回してみよう。正常に1周すればメモリ周りは正常動作はしている事になる。エラーが出たらメモリ設定を見直して再度トライ。エラーが出なくなるまで設定を煮詰める。当然の事だがエラーが出た状態では絶対に正常動作はしない。以前OSがインストールできないと言う不具合で、メモリエラーが原因だった事があった。低クロックCPUでSDR以前だと長時間掛かるが、横着して省略してはいけない。

 2、3周目にエラーが出た場合はどこかの放熱に問題がある。少なくともマザーやメモリの不良確率は無いに等しいくらい極小。ちなみにOSがインストールできないのは、OSも含むソフトウェアの問題でハードとは関係ない。横着してカードを差したままインストールするとハマル場合がある。作業全般に言えることだが、根気が第一と言う事だね。根気が無い人はジャンクイジリなんかしないだろうけど(^^


 こんなものか?