久々に修理と言うか改造依頼が来た。ユニークなネーミングと言うよりは、どちらかと言えばこっぱずかしい名前の3.5/2.5インチHDD外付け器具だ。”裸族のお立ち台”って店員に名前を言うのが恥ずかしいので何とかならんのか。


★概要
◆ 2.5"&3.5"SATAハードディスク用USB2.0接続クレードル!
◆ HDDを垂直に差し込むだけでセット完了!
◆ クレードルスタイルで省スペース化を実現!
◆ 2.5"&3.5"SATA HDD両対応!
◆ 抜き差しに便利なHDD取り出し補助ボタンつき!
対応HDD
シリアルATA(SATA)仕様の2.5インチ/3.5インチHDD
※シリアルATA(SATA)HDD専用です。
パラレルATA(PATA)HDDは接続できません。

 使い慣れれば便利な物件と言える。HDDの熱的にも裸だから放熱されていいかもね。


★解析
 一応ザッと見てみる。ケースを開けると、そこには思わず目を覆いたくなるような回路が広がっていた…らイヤだったが、実はとても簡易な回路だった。専用ICの経済性は偉大だな。ディスクリートで組む奴はアホと言われても仕方が無い。ところで中にハードディスク並みの重量のある鉛の錘が入っていたのには驚いた。確かにこれが無いと不安定で倒したりするよな。このあたりはちゃんと考えられてますね。


crosu2
 なんでも調子があまり良くないらしい。筆者の見立てではコネクタやスイッチの接触不良の可能性が一番高いが、コンデンサも交換してくれとの事なので交換する。


rubycon_yxa
 この10φ×16mmのアルミ電解はルビコンYXA一般用105℃品だ。昭和時代には色々悪評もあったルビコン(ジジイは信英っていうのかな^^)だが、現在では品質に問題があることは無い。何だ、良いもの使ってるじゃないか。


fuhyin_hfr
 だがしかし。チビコンはフーインHFRだ(^^; 取り立てて悪評は無いけど、万歳するほど良い物でもないのは確か。これは交換したいところ。何度も書くが、小型の非固体電解は乾きやすいので良い物を使った方が良い。まあ重要性が低いと言う事でこういうものが使われるのだろう。事実これを取り外しても動く事は動く。ただ原因不明のエラーや不調が起きて悩む事になるかも知れない。苦悩のあまり禿げたくないなら軽視しない方が良い。


inic1606
 手付け部分はイモハンダではないが非常に汚い。無洗浄タイプを使っている「つもり」なのだろうが、明らかにハンダが酸化・変質してますぜ。これは近いうちにハンダ割れ→接触不良となるのは確実だ。ICの脚も腐って折れそうだし、悪化する前に掃除するかやり直した方が良いだろうな。コントローラICは以前解析したLHR-DS01SAU2と同じくイニシオ製。一応有名メーカーのチップで安心した。不具合の噂は今のところ聞いた事が無い。


ogs2576
 OCS2576-50?聞いた事が無いメーカーの謎石だ。しかし慌てず騒がず、これはセカンドソースかコピー品に決まっている。直ぐに思い付くのはLM2576シリーズだ。50なのでこれは5.0VのスイッチングレギュレータICであると判断できる。LM2576のデータシートを見ると脚の配列は全く同じでビンゴ。出力インダクタが100μHなんて流石に小電流の3Aだな。

 CD3が入力のDCだがICから離れすぎ。まあほぼ直流だから許すとして、(ICから見て)電源SWの向こう側に在るのは頂けない。これは現在の部品配置でも配線変更で修正できるはずだが。この電源SWの質が悪いので更に問題が出る。出力コンデンサCD4もかなり離れているが、この配線は出力インダクタの一部と見て(^^; 大目に見てもよい(苦しい)。大電流じゃないからいいかって事で。基板配線は曲がり角が直角にならないようになっているなど基本に忠実だが、思い出したように中間にDCのつもりのMLCCが配置してある。多分高さとスペースの関係でこうなってしまったのだろうが、お陰で見るも無残な基板デザインになってしまった。


esata
 あまり意味は無いけどE-SATA接続も使えるのかな。コネクタは付いていないけど、基板配線はしてある。但しケースには穴の準備或いは痕跡は全く無い。


★交換
 基板設計はどうしようもないので製造君の尻拭いをしてやろう。アルミ電解は全部合わせても4本なので簡単だ。それよりハンダ修正・洗浄の方が面倒だろうな。ルビコンYXAは換える必要は無いが、より一層の高信頼性を目指して交換した。あくまでも計算上だが寿命は3倍以上に延びた。もう永久にコンデンサを換える必要はないだろう(永久保証)。

CD3(2576入力):Rubycon YXA1000μF16V[640mA]
CD4(2576出力):Rubycon YXA1000μF16V[640mA]
CD5(12V_DC):FUHYIN HFR220μF16V[170mA]
CD7( 5V_DC):FUHYIN HFR220μF16V[170mA]
 ↓
CD3:NipponChemiconKZH680μF25V[32mΩ/1650mA]
CD4:NipponChemiconKZH680μF25V[32mΩ/1650mA]
CD5:NipponChemiconKZH150μF25V[110mΩ/500mA]
CD7:NipponChemiconKZH150μF25V[110mΩ/500mA]

 HSDLでは6φはタレント豊富なのだが、KZHで統一するところに意味があるのだ。勿論長寿命だからだが、見栄えが良いという理由も大きい。サイズは元と全く同じで交換は児戯に等しい。


crosu2_after
 基板もフラックス掃除してハンダ付けも一部修正。フラックス掃除の方がコンデンサ交換よりはるかに疲れるというか有機溶剤臭い。


kzh150
 やはりフーインとは信頼性が違って見える(気分)。勿論性能も向上しているが。


★気づいた事
 エージングも兼ねて基板のままで電源を入れてみた。それで気づいたのだが、メインチップは何も繋がないうちからかなり熱を持っている。加えてそれに3.3Vを供給するレギュレータICも発熱している。フル動作時はかなりの発熱なのでは無いだろうか。電源ICはともかく、メインチップには(スペースに余裕があれば)ヒートシンクでも付けると良いかも知れない。HSDLで使用中のNECのUSBチップは発熱としか思えない症状で固まった事が何回かあるし、USB2.0関連チップはこんな感じなのだろう。発作的に全部の機器にヒートシンクを付けたくなってきた。


★終わり
 以上で交換と修正は終わった。ただやはりコネクタの接触が思わしくない場合があるので、SATAコネクタに接点復活剤を一旦塗ってから拭き取っておいた。案外これが一番効果があったりする。スイッチやコネクタにはそれほど長くない寿命があるので、全体の寿命はこれらの使用頻度と運という事になる。