前回の続き。先日書いた通りカメラが不調なので新規写真は無しの方向で(^^;

F86GTS-WDC256X修理(その1)
AOpen F86GTS-WDC256X


f86gts_r1
 8600クラスだと部品点数が少ないので目視点検は楽だ。8800クラスだと見ていく気力すら失われるが(^^; 全体的にフルカバード、またはそれに近いものが増えたため、基板裏面に神経を集中させられるのは良い傾向と言える。しかし手作業の難易度は逆に増しているのは間違いない。

 なお基板製造はZHUHAI FOUNDER TECHNOLOGYで2007年20週製造。XFX製のも同じ基板製造所で、色は違うが2007年37週製造の同一基板。クーラーまで色以外は全く同一の製品だ。修理用リファレンスにするために似たのを狙って買ったんだけど。


★実装
c800
 実は前回調査の後、C800(2012)も抜けているのが発見された。これはAT39100(LDO)の入力コン?なので無くても動くが、省略されずに付いていた物なので付けた方が良い。容量は不明だが他から見て恐らく4.7μFだろう。


c810
 PV-T84G-UDF3を見たら、C810に220μF2.5VのPOSCAPが実装されていた。デカい!そんな大容量なら前回付けた10μF25Vでは全く足りない。脱落していたのはMLCCに間違いないので、もしかしたら100μFが付いていたのかもしれない。今回はMLCCではなくポリマータンタルで行く。220μF2.5Vはネコ電・三洋共に多数余っているからだ。しかも耐圧が低過ぎて使い道が全く無い…(^^;


q501
 半壊のMOSFETを触ったら割れてしまったので交換する。懸案のBSS138は秋月に売っていた。@8円なのでタダみたいなものだ。しかし買った後で半導体入れにBSS138を1つ発見してしまった。まあこれからも頻繁に使うだろうけど。これが割れているカードは意外に多いからな。


 次に基板表だが、ヒートシンクのグリスが焦げていた。恐らくグリスの質が悪いのだろう。同じ製造工場で作られたと思われるPV-T84G-UDF3は熱伝導ゴムが入っていた。冷却だけを考えれば6W以上の高級グリスが良いのだろうが、HSDLには無いので熱伝導シリコンラバーシート TO-3P用(10枚入)を入れてやった。これの穴の開いている上半分を切り取ってからヒートシンクとメモリの間に入れる。ゴムには勿論グリスも塗る。

 これで表も完成。クーラーはヒートシンクを洗っておいたので新品同様。ヒートシンクがホコリで汚れていると、恰も「毛皮のコート」を纏っているのと同様に冷えないのでクリーニングは必須だ。


★テスト
gpuid_8600gts
 元々チップやメモリに異常は無いので、起動さえすれば恐らくOS上でドライバを入れても問題ない。これが初のGF8600GTSになる予定だったが、後から来たXFXに抜かれてしまった。ところで下側コネクタから画像が出ないんだが、これって失敗してるのか?(^^; 部品は付いているんだがなあ…。これでも使えるからまあいいか。


bench
 ベンチの結果は8600GTよりもはるかに遅い!何故だ?いくらマザーが違うと言ってもこんなに遅い筈は無い。それ以前にPen4が負けているという説もあるが…何しろ530Jだからな(^^; しかし間もなく原因は判明した。ゆめりあベンチを回したら1回目44000で、次からは3万台、2万台と順調に落ちている。このベンチは回すとむしろスコアが上がる傾向にあるので、スコアが落ちるとすれば発熱以外に考えられない。メモリに貼ったゴムが厚過ぎてGPUの密着が悪いのかも。わざわざ新品で買ったゴムなんだが役立たずか…。


★部品表
 U510のDC(1005)は無くても良いハズなので付けていない。ケチってMLCCは殆ど流用で済ませた。

C607(2012):不明MLCC4.7μF
C677(2012):不明MLCC4.7μF
C800(2012):不明MLCC4.7μF
C810(3225):NEC PS/L220μF2.5V
D510付近のMLCC(1608):不明MLCC0.1μF
D520:BAV99
D520付近のR(1608):0Ω
FB_COMP(1608)→不明MLCC0.01μF
Q501:BSS138
熱伝導シリコンラバーシート×4
合計62円(銭単位切り上げ、副資材別)

 うーむ、熱伝導シリコンラバーシートが…これだけで60円だからな(^^; まあ今回のテストが終わったら剥がすので計算に入れなくとも良いか。


★終わり
 GF8600GTSが100円と言うのは有難い。HSDLにはG84は数あるが、GTのメモリOCではGTSに追いつかない。今でもそれなりに価値はあるんだな(HSDLで現在動くGF系では最強)。

 故障の原因は最初から決めつけないで、先入観を持たず柔軟に考えなくてはいけないと思う。皆さんも無闇矢鱈にヒートガンで炙るのは(再起不能になるだけなので)止めましょう。どうせピン数の多いハイエンドは炙っても蘇えらないし…。


★おまけ
 気づいた事として、AT39100の出力コンが挙げられる。このレギュレータICはLDOなのだが、当該回路では出力コンがC809、811のMLCC(10μF?)で構成されている。がしかしこのICのデータシートにはこう書いてある。
〜前略〜AT39100出力コンデンサ選択は安定を維持する出力コンデンサのESRに依存します。出力コンデンサが10μF以上の場合、出力コンデンサは2Ω未満のESRであるべきです。これは安定を促進すると同時に過渡応答を改善するでしょう。MLCCのような超低ESR(<100mΩ)のコンデンサは不安定を促進するかもしれません。これらの非常に低いESRレベルは発振を引き起こすかもしれません。一番適しているのはタンタルコンデンサです〜以下略〜

 翻訳はテキトーだが大体の意味は解るだろう。つまり「MLCCはヤバいからタンタルを使え」と指示されているのだ。オイオイMLCC10μF×2なんてモロにヤバいじゃないか(^^;

 思うにこのU504は同サイズの1117を想定してるんじゃないだろうか。あれならMLCC対応しているので問題無い。生産側で別の1AレギュレータICをテキトーに選択してしまった可能性がある。この2.5V電源の目的は分らないけど少々気になる部分だ。現実にこれまで使われていたカードだから「これでは動作しない」という事はないだろうけど。

 後に手に入れたPV-T84G-UDF3のはAZ2940Dだった。これも50mΩが下限リミットと明記されているんだけど出力コンはMLCC(ESR<10mΩ)だなあ…本当に考えて選んでるのか?どちらもDpakなので、いずれ手持ちの1117-2.5に交換してみる。普通に考えれば性能は変わらないだろうが、電源なので違いは出る可能性は皆無ではない。いや、出来ればハッキリ違いが出て欲しい(^^

http://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-01217/
 秋月には5、6年前にHSDLで下駄改造に使ったFAN1117A-2.5がまだ売ってるんだな。これに交換すれば気分的にも安心?