ECS P6ISA-II MOD編・外伝

 読者は解っている人ばかりと思っていたが、質問が来たので「もしかして知らない人も多いのか?」と心配になって記事を書いた。もちろんTO-252とか263等のSMDパーツを想定している。マザーボードやビデオカードにはラジアルリードのはあまり無いし、そもそもラジアルリードなら教えなくとも普通にできるわな。このような文章を読むより実際やってみるのが一番なので大した役には立たんが一応。


to252_to263
 左が古いマザーではおなじみのTO-263パッケージでDD-pak又はD2-pakとも呼ぶ。右が最近のマザーやVGAでおなじみのTO-252パッケージでD-pakとも呼ぶ。これら面実装タイプは実装が容易なのとヒートシンクが必要無いので現代のPC製品では主流となっている。


★サンプル
 今回は交換作業を見せるのが目的なので何でも良いだろう。そうだ、以前途中まで弄って放置されているP6ISA-IIにするか。全NCC化以来、約2年ぶりの記事登場となる。


before_irl3103s
 上下スイッチ共にIRL3103Sが使われている。RdsONはVgsやIdにも依るが12〜16mΩ程度。これでP!!!なら充分と言えるが、発熱を低減する意図でもっと良くしてもバチは当たらない。イヤ交換しないとここで記事が終わっちゃうんで…(^^;


ipb10n03l
 IPB10N03LのRdsONは6.5〜13.4mΩでIRL3103Sより一段上ランク。RdsONだけでなくTrrも速いので効率は上がる。スイッチ自体が速いから本当は上下共これに変えたいけど、もったいないので下側だけこれに換えよう。ちなみに金属ゴミで捨てた廃品マザー(注)から奪い取ったのでタダ。ドレイン・タブの構造は知っておこう。どこを熱すればよいか分かるはず。

注:恐らくGA-7VKMLSだと思う。今から考えるとこのマザーは死んでいなかったのではないかと思うが、引っ越しついでに捨ててしまったので有耶無耶になった(^^;

★準備
 何事も道具が無ければ始まらない。殆どの読者は恐らく持っているだろうけど一応確認の為。


kotesaki_980td
 ハンダゴテとハンダ吸い取り線は必需。コテ先もこのタイプが良い。ハンダはマザーボード修理では0.6φ一択。あとビデオカード用に0.3φがあれば良いかな。0.8だの1φだのをマザーに使っている人はハンダ盛り過ぎのヘボカス君。それは低レベル電子工作・アンテナ工事・真空管オヤジが使うモノであまり流れない。高度なモノほど密集度が高いのでハンダも細くなっていくわけだ。細いモノなら太い用途にも使えるので心配ない。

 コテは新しく買うなら温調タイプを買おう。パワーMOSFET交換はコンデンサ交換と違って「一度きり」の安易な気持ちで踏み込んでよい領域ではない。という事はこれからも作業を続けるのだから、一生使うつもりで出来る限り良い道具を買うべき。良いモノを買った方が作業が楽だし(特に冬場は楽)、後々絶対に良かったと実感できるはず。また初心者ほど良い道具を使った方が早く上手くなる。

 ちなみに現在付いている石はゲート・ソース両足を剥がして浮かせた後、ドレイン・タブを石が動くまで熱し続ける。良い基板ほど時間が掛かるので気長にやる。少なくとも剥がせないようなコテや腕では付けられないのだからまず外してみよう。初心者は練習基板で作業を一通り練習する事だ。壊れていないマザーの石を外してまた付ける。それで正常に動けば問題無い。


★作業1
 上で「下側だけ変える」と書いたが、マザーを見たら下側は内側で面倒くさい所に付いている。仕方が無いので上側だけ変える事にした(てぬき)。これでは今回の交換の意義は殆ど無いかもしれんな…(^^; まあいいかサンプルだから。

 キレイに付けるにはまず基板面を平坦にすること。汚い付け方をしている人はこれが不充分なのだ。ハンダ吸い取り線でハンダ面の掃除をする。これは要らない基板で徹底的に練習した方が良い。パワーMOSFETに限らず面実装のリワークはこれでキレイさが決まる。


remove_6035
 キレイにと言っても鏡のようにテカテカにする必要は無い。あくまでも平坦にするのが目的だから。レジストは極力剥がさないように。吸い取り線をコテ先でギュウギュウ押し付けると容易に剥がれてしまう。剥がれるとハンダが関係無い部分に流れて厄介な事になるし見た目汚い。


mosfet_remove
 この写真では252と263の境界のレジストが剥がれているが、もしこのような両用基板にTO-263を付けるなら、境界のレジストは意識して剥がす。境界が残っていると外から内にハンダが流れないので確実に失敗する。空気が入ると放熱できないのでヘタすると石が壊れる。メーカーの製造はリフローハンダ付けなので境界があっても大丈夫なのだ。コテとはハンダの流れ方が違う。


remove_irl3103s
 作業―了。これであとはハンダ付けするだけ。50%は終わったと考えてよい。なお中古のMOSFETはハンダが残っている場合があるので前もって掃除しておく。ドレイン・タブに吸い取り線を当てるのだ。古いフラックスもテキトーに掃除する。ゲート・ソースはある程度自由度があるのでそのままでも良い。


★作業2
g_s_ipb10n03l
 作業△魯押璽箸肇宗璽垢鬟魯鵐隻佞韻垢襦これは説明しなくても簡単だよね。但し置く位置は厳密に合わせなくてはいけない。曲がると後で困るので確実に。位置がずれるので脚は曲げてはいけない。位置はもちろんドレイン・タブ位置で合わせる。この作業までは後戻りが簡単にできる。後にドレインを止めてしまうと曲がりを直すためには苦労してまた剥がさねばならないので慎重に。足にハンダをテンコ盛りする必要は無い。市販製品の盛りをよく見てみよう。それと見た目が同じになればよい。


★作業3
 パワーMOSFETの絶対破壊温度は300℃で10秒程度だ。ハンダが溶けない175℃程度の温度で壊れることは無いのだから、極端に言えば溶けるまで10秒どころか何分掛け続けても壊れない事になる。まあそこまで熱をかけないでもハンダは溶けるけど(^^; 「熱を掛け過ぎないよう注意」をするよりも熱不足を気にした方が良い。

 なぜこんな事を書くかと言うと、最後のドレイン・タブを止める作業は放熱との戦いだからだ。マザーボード基板は石を冷やすために色々工夫しているのだから、ハンダゴテで温めてもハンダが溶けないのは当然だ。設計・品質の良い基板ほど溶けない、と言うよりハンダが溶けやすかったらその基板は放熱に問題がある。ここで温調ハンダゴテの良さが分る。夏はどんなコテでも出来るだろうが冬は温調が助かる。


d_ipb10n03l
 あとは普通にハンダ付けする。コテ先はMOSFETのタブの側から、タブと基板の両方に同時に当たるようにする(当て方はここを参照の事)。上でタブの構造を見れば判るようにこの方角からしか熱は受け付けない。ここでマイナスドライバみたいなコテ先が活きる。

 基板のハンダが溶けてきたらハンダゴテを当てつつ石を上から押さえてみる。熱が回っていれば下のハンダが液体のように動くのが見えるはずだ。押さえてみてピッタリ付いたらコテ先は直ちに離す。奥まで溶ける感覚を掴むまではこれで練習する。

 言うまでも無いけど石は強烈に熱いので押さえる時は火傷に注意。ハンダも盛りすぎない事。基板と石の間にハンダを意識して残す必要は無い。グリスのように潰して隙間に空気を入れないようにするのが肝要だ。古いハンダを極力除去して平らにする意味はそこにある。冷却は基板で行なうので密着していないと高確率で壊れる。


pomosfet
 ジャンクマザーで発見したハンダ盛りすぎの失敗例。典型的なシロートハンダ付けだが、ブニュっとはみ出て非常にカッコ悪いばかりでなく、完全に密着しているかどうかも非常に怪しい。何故なら充分に熱が掛かっていればハンダは流れるのでこのような山になる筈が無いのだ。


after_ipb10n03l
 作業終了でこのようになった。他と違って有鉛ハンダがキラキラ良く光る他は、元から付いていたのと変わらない。たぶん初心者には見破れないでしょう。写真上の元から付いている下側スイッチが曲がって付いているのが気になってきた。付け直したい!しかし面倒なので止めた(^^


★終わり
 壊れてもいないパワーMOSFETを交換してしまったが、このようにパワーMOSFET交換できるとマザーボード修理の幅は大きく広がるので是非ともマスターしよう。ハンダ付けが普通にできる人なら1、2回やれば上手く行くハズ。上手く行かない人はこの作業はまだ早いので、普通の易しいハンダ付けの練習から始めよう。