大掃除をしていたら記憶に無かった珍しい箱が出てきたので開けてみた。


★MSI BX MASTER
 型番はMS-6163[Rev3.0A]である。このMBを入手したのはHSDLブログも始まっていない2005年5月1日で、HSDLのMBでも指折りの古代物件だ。驚く事に未登録、つまりOSをインストールして使用した事が無い(注1)。動作チェックしかしていないという事だ。

 箱を開けてみた。何だこれ!まるで新品と見紛うような美品。それもそのはず、筆者は当時は新品厨房だったので新品かそれに準じるものしか眼中に無かったのだ。但し付属品の内ライザーカードだけが欠品である。そこら辺のHOに転がっているので手に入れてくるか。このマザーはアキバのスリートップ(現在は通販専門?)で500円で入手した(はず)。

ms6163_rev30a
 これの現役当時をよく知らないのだが、MSIのi440BX搭載Slot1マザーでは売れ筋だったと記憶している。大仰なマザーボード名からしてかなり背負っているが(^^; 恐らくスロ1の決定版を目指したものだろう。但しVRMの基本設計はVRM8.2時代の物で結構古い。過去にHSDLで取り上げたマザーでは、
AOpen AX6BC Pro
ASUS P2B-F
Abit AB-BH6
 辺りが競合機種だろうか。まさに前世紀の遺物である(当該品は2000年製)が、筆者はスロット1の全盛時を知らないので当時のスロット1事情に疎い。そのお蔭で先入観が無く新鮮な目で見られるし、当時のマザーをもっと新たに知りたい気持ちも強い。このマザーにしてもHSDL所有でありながら実は詳細に見た事が無い。記事を検索したら既にインターネット上からも消え始めているので、今これを解析して語り継ぐ価値はあるかも…そう思って書き始めたのだが。

注1:HSDLの分類ではOSを入れてテストした物件にはPC名が与えられる。それが登録品。それ以外は「未開(箱入り未使用品)」「未動(動作チェックしていない)」「未登録(動作チェック済み)」「予備役(2枚ある内の保存品の方)」に分類される。

★VRM
vrm
 コントローラはSEMTECHのSC1153CSWでVRM8.4仕様である。一応スペックで言えばP!!!対応している訳だ。だがパーツ構成はPII(8.2)と大差なく、P!!!の上の方に耐えられるとは思えないし現に世間では耐えていない。スイッチング周波数は実測で約206kHzとSC1153リファレンス回路の標準200kHzに近い。


ceb703al
 上下スイッチはマザーボード上ではおなじみCETのCEB703ALである。RDS_ONが14〜30mΩとハッキリ言ってショボイ。同時代ならIRL3103Sの方が断然上だ。SC1153データシートには「上下共AMRとしてRDS_ONが22mΩ以下(意訳)」と書いてある。発熱を考えるとギリギリだな。更に悪い事にRDS_ONの割に速度も速くない。いっその事燃えるか死んでくれたら交換するのに(^^ もっとも電解コンを良品に換えたらそんなに発熱しないかもしれない。D3の5817はステアリングダイオードで下側スイッチQ5の補助である。スイッチがCEB703ALではなかったら無くても良い。効果は下側がホンの一寸速く立ち上がるだけだ。


chockcoil
 出力インダクタはT50-52互換コアに#17×11回巻きなのでインダクタンスは約4μHとなる。勿論これはバイアスがゼロの時の値で、動作時に電流が流れるとインダクタンスは大幅低下する。例えばP!!!の最大電流である17Aを流すと1.83μHと半分以下まで低下する。

 入力インダクタは同じくT50-52互換コアで1.6μHだ。下の「使用コンデンサ」で引用したコンデンサ膨張例の写真ではインダクタが熱により緑色が茶色っぽく変色しているのが判る。炎上はいきなり起るわけではないので、どこら辺で気づくかによって修理できるかできないかが決まる(^^

CHOKE1(出力):T50-52互換,#17×11T[3.99μH]
CHOKE2(入力):T50-52互換,#20-3P×7T[1.62μH]


vrm_cap
 VRMの電解コンは8φが出力で10φが入力コン。このマザーの時代はまだ日本メーカー製を使うのは普通だったのだが、このマザーは先進の?オール中華製である。出力9本はやはり8.4対応の為だろうか?それにしては入力が2本しかないのだが。そしてこのマザーのVRMが炎上するのはこの弱い入力コンが原因である。コストダウンして自爆していれば世話は無いが、このメーカーはコンデンサを減らし過ぎて起動しないマザーを発売した前科がある。平常運転って事ですかね(^^ 2本で絶対に飛ばないようにするのは、固体電解とは言わないまでもそれなりの高性能の電解コンが必要だ。電解コンがショボイならP2B-Fのように4本立てる必要がある。ここで壊れないASUSと差がついているな。


rc1585m
 入力コンはショボイがVtt1.5だけはRC1585のような高性能ICが用いられている。確かにコイツはGTL+の専用ICだがxx1085の方が安いんじゃない?浮いたコストは入力電解コンをもう1本増やすのに使えばいい。デュアルCPUにも使えるICはコイツにはもったいない気がしないでもない。尤もこのお蔭か?Vtt関連の不具合が出なかったらしい。上で褒めたP2B系は逆にこのVttによる不具合(所謂ASUSマザーVtt問題)でハイエンド用途では事実上お役御免になった。

 よく見たらこの電解コンの使い方もおかしいよね。なんでこんなに巨大な入力コン(EC8)が付いているんだろう?まあ入力コン重視はHSDLもそうだが、このマザーのようにVRM入力コンを異様にケチっているマザーがなぜVtt1.5の入力コンというどうでも良さそうなものだけ重視するのだろう?ASUSだったら省略している程度の部分だ。ケチるならEC8自体を排除するか、安定性重視ならこれをVRM入力コンに回せば良い。予算をケチったというよりは使い所を間違えているのではなかろうか。

 この時期でもパーフェクトな製品と言うものはなかなか無いよ。世間では鉄板と言われていた440BX板だが、上の例やBP6でも分るように実際は色々な所でボロを出しているのは歴史的事実。ハッピーな思い出補正をかけて事実から目を背けていてはいけない(^^


★使用コンデンサ
 このマザーのメイン電解コンはかなり質が悪い。下のマザーは出力コン以外はHSDLのと同じコンデンサ構成の製品である。
http://www.svethardware.cz/forum/vbimghost.php?do=displayimg&imgid=1551
http://www.svethardware.cz/forum/vbimghost.php?do=displayimg&imgid=1550
 この時期のマザーで電解コンが膨らむなんて滅多に無いんだけどね。ギガバイトやMSIくらいじゃないのか。この写真の人は気づいているか分らないけど、上下のパワーMOSFETのハンダも煮えたぎっているから、使い続ければ確実に(近いうちに)燃えちゃいます。

=入力コン=
 上のVRM解析でも書いたが何と2本しかない。VRM8.2当時ならいざ知らず、中華コンでは高クロックP!!!で爆死決定だ。しかしMSIは「1GHz対応」と明記しているな(^^;

EC5:Chhsi WG1500μF10V[22mΩ/2150mA]
EC6:Chhsi HK1000μF10V[NA/550mA]

 当時の安物マザーによく見られたChhsi(正新)である。正新じゃなくて致死と読みたくなる(^^; 性能の割に案外幅広いシェアを誇る?ので被害多数。現在はサイトが行方不明だがデータシートを発見したぞ。何とHKは一般用105℃品だった!サイズが同じなので間違いなかろうが呆れるぜ。WGは高性能だがカタログ通りの性能が出るのかな?

 交換するとなるとHSDL所有品なら2本ともWX1500μF6.3Vか。その場合ソケット寄りの方がCPUに当たりそうで気になるが…。

=出力コン=
 出力は一般的なマザーと同様に9本並べて構成だけならP!!!仕様だ。ChhsiではなくTAYEH LE1000μF6.3Vだった。TAYEHもメーカーサイトが無いので性能は不明だが、恐らくルビコンYXGと同等と考えられる。理由はP2B-FのVRM出力で互換品として使われていたから。

EC1:TAYEH LE1000μF6.3V[不明]
EC3:TAYEH LE1000μF6.3V[不明]
EC7:TAYEH LE1000μF6.3V[不明]
EC9:TAYEH LE1000μF6.3V[不明]
EC10:TAYEH LE1000μF6.3V[不明]
EC12:TAYEH LE1000μF6.3V[不明]
EC13:TAYEH LE1000μF6.3V[不明]
EC17:TAYEH LE1000μF6.3V[不明]
EC18:TAYEH LE1000μF6.3V[不明]

 緊急課題の入力コンと違って、出力コンは膨らんだり漏れたりしない限り交換する必要はない。ただもう15年ものなので交換するのもアリかな。HSDL所有品では同サイズのWG1000μF6.3Vだろうな(無用に性能が上がるけど^^;)。当該マザーは破損劣化は無いので交換はしない。


★ノース
north
 440BXのデカップリングはあまり上等とは言えない。P2B-Fのように周辺にタンタル電解なども見られないし、明らかに手抜きしているのが判る。メモリスロット上方の電源ICはRC1585Mだが、メモリ電源ではなくノースブリッジの電源だった。BIOSメニューで3.3〜3.6Vまで変化させられる。当初はメモリ電源だと思っていたのでちょっと驚く。他の440BXマザーで明示的にこれを変化させられるのは見た事が無い。どうせならメモリ電源も4Vくらいまで変化させられると良いのだが。SDRのAMRは4.6V程度なので4Vまで上げても即死亡する事は無い。

 メモリスロットは4つあり、440BXの仕様一杯の1GBまで積める。実はイソテルの440BXリファレンスマザーの回路ではメモリスロットは3つ(768MB)なんだけどね。限度一杯に積むと何か不安になるのは筆者だけだろうか(^^

 パッと見ではIDEコネクタが4つあるのが目を引く。右の青い方のコネクタが、この時期に流行ったオンボードATAコントローラに繋がる。但しATA100ではなくATA66なので速度は大差無く、ドライブが多数繋げる以外にメリットは少ない。


★サウス
south
 スロット周りのDCは全くでは無いがかなりショボイ。PCI・ISA共にDC不足による不具合も大いに考えられる状況だ。もしPCIカードに不具合が出ても、IRQとか接触とか特に関係の無い原因を追究してしまいそう。


★他周辺
pdc20262
 これが選ばれたMS-6163に搭載されているATA66コントローラだ。これが載っている事で栄えある?BXMASTERの称号を佩びる事が出来るのだ。しかしAC97サウンドを除いてはオンボードデバイスは陳腐化しやすいので善し悪しだ。このATAコントローラも直ぐに100になってしまって取り残された。HSDLでは変化の少ないサウンドやNICの方が有り難い。


diag_led
 この"Diagnostic LED"はPOSTカードの簡易型である。点灯パターンによって起動しない原因の究明に役立つ。自作用マザーには全てのマザーにこの機能が欲しい。

 ブザーはボード上にあるが、これはJFPの14-15をジャンパしないと鳴らないようになっている。ECSのP6ISA-IIでもあったけど、勝手に鳴るとピーピーうるさいので良い機能だ。通常動作チェックする時は鳴らすけど、このマザーはDiag_LEDがあるので鳴らさなくても大丈夫。


w83708d
 プローブチップ周り。残念ながらCPUのサーマルダイオードを使った温度計測は出来ないようだ。


★動かしてみる…だがしかし。
 さて周辺の準備も終わったところで動かすのだが、ハッキリ言ってこのマザーは買ってきたばかりのジャンクのように自信が無い。何しろ10年間放置されていたのだ。書類上は未登録となっているので入手時に動作チェック済みらしいが、10年と言う歳月は完動品であったものを不動品に変えるには充分な時間なのである。

 流石に有名メーカーの売れ線だけあって、製造後15年以上を軽く超えているにもかかわらずマニュアルやBIOSアップデータがメーカーサイトからダウンロード出来る。やはり厨房は有名メーカー製を選ぶしかないという事か。ドライバは2k以降なら全部入っているはず。

cpucode_org
 CPUCODE.BINの対応CPUはこうなっている。これを見たところ、BH-6と同じくSlot1のCPU以前だけに対応している模様。ソケ370ライザーでDステップを載せた場合にはOSのサポートかBIOS書き換えが必要となる。少なくともME以外の9xだと書き換えが必要だ。


biospost
 起動はしたけど…何なんだこの遅さは!メモリカウントが遅すぎて写真に写っているじゃないの。まるでW2kを486SX25で動かしたように重くそして遅い。何しろテキスト表示が波打っているのだ。クロックがFSB66×4.5の300MHzになっているんじゃないか?と思ったがFSB100で全く正常。メモリはデフォだが、メモリ設定でこんなに遅くなる事は有り得ない。


memtest_bxmaster
 続いてMEMTEST86+にかける。クソ遅せえー!そう言えばこのマザーは動作チェックした時もデフォ設定だと死ぬほど遅かったのを思い出した。65MB/sってアンタ…(^^; IDEと大差無い速度だぜ!遅いわけだよ。何しろ430TXマザーにK6-200ALRを載せたPCの半分の速度しか出ていないのだ。ヒマそうに完走させてみたら一周でも3時間40分かかった。

 このマザーではないけど、MSIの440BXマザーはこんな話もあるしなあ…(注3)。尤もこのマザーはBX初期の製品じゃないんだけどな。でも前科があるのだからレジスタ調査は必要かもしれないな。面倒だけどインテルサットでチマチマ見ていくか…ああ面戸癖(^^;

注3:In-Order Queue Depthが0の時、CPUバスは強制的に非パイプライン動作となるらしい。

★続く?
 何でこんなに遅いのかわけ解らんので色々調べてみる必要がありそうだ。それまではテスト中断という事で。何か分ったら随時書くことにする。


★おまけ
 このマザーはCPUコア内のサーマルダイオードを使ったCPU温度計測にノーマルでは対応していないが、抵抗の交換と配線のショートだけの簡単な改造で対応できるようだ。原典はこれだ。

jsor1
 確かにこれは簡単だ。当該マザーはSL3CCをファンレスで動かしたが、ノーマルだとCPU温度が10℃台で如何にも怪しすぎる。加藤麻衣ファンレスで15℃は無いだろう(^^; 直ぐにでもやろうと思ったが、あいにく30kΩのSMD抵抗が無かったので止めた。そのうちアキバにでも行ったら手に入れておこう。