昔の機材で遊ぶのは面白い。何故なら我々が未来に生きているからだ。当時の専門家が知らなかった欠陥を誰もが普通に知っている。当時の技術者や評論家が描いていた未来が実は来ない事も…。昔のPC記事を今読むと面白い。「今後マザーボードはATXからBTXへ緩やかに移行していくだろう」とか書いてあるし…(^^;


zenkei_p4b533
 閑話休題、このP4B533無印(Rev1.03)は設計はごく普通なのだが、例によって一部の部品が生産段階でケチられているのでもったいない。そうは言ってもこのマザーをクソマザーと呼んでいる人には出会った事が無いので、部品に負担をかけないならば良いマザーなのだろう。


★ちょっと見る
 どんな製品も定格で使うなら問題なく動くのだろうが、そもそも定格でしか動かない物は定格で使うのもお断りだ。アンタらそう思わないか?今にも崩れそうな崖の下で生活していて不安にならない方がどうかしている。劣化マージンを考えて、やはり定格+αで安定して動くのは必須条件だろう。ギリギリ設計にロクな物は無い。


taicon1
 出力はニチコン系列のタイコン製HI3300μF6.3Vだ。で、今の今までこのマザーの出力コンは5本だと思っていたのだが…。


taicon2
 実はこのノースブリッジ横にあるCC32も出力に繋がっている。こんな昼行燈、全然効いてねえよ!と言いたくなるようなスットボケた位置にある。この部分から僅かだがチップセットにもこの電圧を流用している模様。だがそれだけの目的(チップセットのDC)にしては容量が大き過ぎだし、部品番号も出力コンと通しなので出力コンと分類する(注)。他にCC30(10φ)とCC30A(8φ)の空きが用意されている。番号からするとこれは排他実装か。

CC27:TAICON HI3300μF6.3V
CC28:TAICON HI3300μF6.3V
CC29:TAICON HI3300μF6.3V
CC30:Empty(10φ)
CC30A:Empty(8φ)
CC31:TAICON HI3300μF6.3V
CC32:TAICON HI3300μF6.3V
CC33:TAICON HI3300μF6.3V

=タイコン⇔ニチコン互換表=
TAICON[HG]=nichicon[HE]↑低性能
TAICON[HF]=nichicon[HD]
TAICON[HH]=nichicon[HV]
TAICON[HI]=nichicon[HM]
TAICON[HL]=nichicon[HN]↓高性能
*タイコンにはHZ相当の製品は無い

 これを見るとタイコン[HI]はニチコン[HM]と同等品だ。P5B533にはニチコン[HM]バージョンも製品として存在するからロットにより変わるのだろう。見た事は無いが、ニチコン系以外のもあるかもしれない。

注:後に発売されたP4B533-Eを見ると、CC32に当たる電解コンをCPU脇に移動させる等改良の跡がうかがえる。上の推定通り本来の役割は出力コンなのだろう。この事実から見て無印の配置は失敗だという事が判る。恐らく回路設計者と基板設計者は別人で、両者の意思の疎通ができていなかったのだろうと思われる。

 DCコンの容量は、原則的には電流変化量Iで決まる。もし電流変化がほぼ無いLEDのような負荷ならばDCコンは無用である。だがスイッチング電源やPCのようなデジタル機器にはそれは絶対にあり得ない。まずはデバイスが「電流が変化した時にどれだけの電圧降下を許容するか?」を知らなくてはいけない。CPUの場合はデータシートに記載がある。

 この時期殆どのVRMの出力コン容量は必要量より多い。これは静的リプル低減に必要なESRを満たすと必然的に静電容量も大きくなってしまうからだ。なのでその条件を満たせば容量は成り行きでもだいたいOK。もっともMLCCのようにインピーダンスに対して極度に直流容量が低い場合はその限りではない。これは通常アルミ電解コンデンサの話だ。


inductor
 インダクタは入力が不明フェライトバーに7回巻き、出力がT50-38?に7回巻き。38は低周波用でこの時期もう滅亡してるはずなんだけど。恐らく中華オリジナルコアなのではないか?巻き数から見て特に高性能でも特殊なモノもない。一般的な52や26と同レベルだろう。ま、分らなくても再設計すれば問題無い。


power_mosfet
 上下スイッチのパワーMOSFETは上がPHD78NQ03LT(DPAK)で下がPHB96NQ03LT(DDPAK)である。上下違うパッケージのハイブリット仕様は珍しい。剥がして確認したわけではないが、下は恐らくDPAKも使用できるはず。


hip6302
 VRMコントローラはVRM9.0の標準とも言えるHIP6302である。スイッチング周波数はHIP6302の8番ピンに繋がるRtにて決定する。このコントローラのリファレンス回路ではRt=100kΩとなっており、その際のスイッチング周波数は実効で275±30kHzとなる。

 このマザーではRt(RR33)は270kΩとなっており、実測でも設計値に近い105kHz×2相(実効210kHz)だった。HIP6302リファレンス回路から意図的に下げられている事になる。HSDLで見てきたVRM9.0のマザーの中では低い部類に入る。

 BIOS設定ではVcore上限が設けられており、例えばSL6K8のように1.400VのCPUだと1.600Vまでしか上げられない。これはOVER_VOLTジャンパにて上げられる。USBやKBDのジャンパと同じ所にあるので間違えないようにしなければならない。


cpu_dc
 これはCPUのDC(デカップリング)コンである。CPUに於ける高周波の電流変動はノイズとして観測されるが、それを打ち消すのがこの補償コンデンサの役割だ。大規模な電流変動(直流変動)には容量的に間に合わず無用となる(動的リプルの発生)。つまりこのDCは同じラインに繋がっていてもVRM出力コンとは働きが異なり、マザーではなくCPUの付属物と考えてもらいたい。当然ながら位置はCPUに近ければ近いほど良く、理想を言えばCPU基板上に欲しい。


ics950224
 クロックジェネレータICはICSの950224である。Web上にてデータシートが見つからないので詳細は不明だが、一応BIOSメニューで全てコントロール可能と思われる。この時代には100〜200MHz(FSB換算で400〜800)の範囲で動かせればまず問題は無い。ディップスイッチDSW1でもコントロールできるのは助かる。


ce31
 メモリスロットとチップセットの間にあるCE31(空き)は、テストで効果が無かったので除去されたのだろうが、DIMM1〜3のシルク印刷の右横に配置すべきだったと思う。それだと多少は効果が有るはず(基板裏を見ないと解らないが^^)。この位置だとパッと見た目でも何のために付いているのか分らない。回路図上ではどちらも全く同じ位置だが、実装によって効果が全く違ってくるのがアナログ回路。このCE31は上のとんでもない所に付いている出力コンとよく似ている。

 この基板設計者はどうも経路上にDCコンを置く習性がある。まさかとは思うが兼用のつもりなのだろうか?DCには兼用などという物は無い。というより兼用されないようにするのがDCの基本(他と切り離す)である。


ams1505
 メモリ電源部分だが、容易に可変するためかシリーズレギュレータICで済ましてある。AMS1505は5AのLDOだが、その性能は数あるシリーズレギュレータICの中でも最高クラスなのでメモリ電源でも特に不満は無いか。


★続く
 不毛な解析をしてもしょうがないのでテキトーに流す予定だったが、こんなレベルでも基板の不具合らしき所が見つかってちょいマジになってしまった(^^; そんなわけで動かすのはまた次回。実はもう作業は終わっているのだがまとまらないので。