先日入手したFireGL V3100だが、片方は全く動作しなかった。動作チェックでも指摘した通り、またもやPCI-EのMLCCが砕けて消滅していた。何でこんな所がピンポイントで壊れるんだろう?わざとやっているとしか思えない。がしかし、「ジャンクFIREGL V3200」の時とは違ってランドは全く無事である。これなら捨てるまでもない障害なのでサックリ直して動かしてみたい。


★現時点での犯人
c631_632
 動作の障害となっているのはこれに間違いない。このMLCCは電源のDCではなくデータラインのCCなので無ければ祈っても願っても絶対に動かない。逆に言えば「これさえ直せば完全動作」の可能性が高いので、もしこれが理由で価格が安いのならば買い得ジャンクではある。小汚いのでまずはカード洗いから始めるか。


★洗う(^^;
 良い子の皆さんは決してマネしてはいけません。電解コンへの浸水や接点の腐食ばかりでなく、水を切る時にカードを振ったらハンダ割れの原因にもなるので、そのあたりの事情に無知な人は特に真似しないように。


bara_ms8964
 まずはブラケットやクーラーなどバラせる限りバラす。横着してバラさないで洗うとヒドイ目に合う場合が多い。ビデオカード・ジャンカーの腕はクーラーをいかに早く無傷で外せるか?で決まる(^^ これは中央のピンを抜く奴なので3分もあれば外れる。サーマルコンパウンドは洗う前に有機溶剤を使って完全に除去する。これは50円ジャンクなので中性洗剤までしか使わない。価格によって洗剤まで差を付けるHSDLなのである。洗いあがったカードは傷が少なかったので中古美品となった。


rv370gl
 中身はFireGL名義だったが、ジャンパ抵抗の位置を変えれば色々なカードに変身するのだろう。ちなみに2006年11週とかなり新しい。当時このカードは新品1980円で投げ売りされていたらしいが、RV370の売れ残りの在庫処分の製品だったのかもしれない。


★直す
 外で完全に乾燥したらいよいよ修理本番である。完全に乾燥しないうちは始めてはいけない。まずはランドに残留しているパーツの破片とハンダを掃除する。これをキッチリやらないとまともな修理は望めない。1608以下の超小型パーツを扱える事とハンダ吸い取り線に慣れること。現代のビデオカード修理はそれに尽きる。


c631_632_after
 少なくともこの時期のPCI-Eは全て0.1μF(100nF)で良さそうだ。形状の良い1608なので付けやすい。MLCCのメーカーが違うので色が違ってしまった。色を見なければ修理したとは気づくまい。実は同じ色もあったのだが、筆者自身がどこを直したのか判らなくなりそうなので敢えて違う色にした。


★動かす
hwinfo_ms8964
 先ずはどうでも良いマザーに付けてVGAでチェックする。VGAでノイズも出ず普通に動けばまず完全動作は間違いないだろう。


catalyst8583
 AMDのサイトに行ってこの最終ドライバ8.583をダウンロードする。これはラデに比べ3Dバージョンが古いのだがFireGL系は致し方ない。余談だけどFireGL⇒RADEON化もアリだと思う。ゲホ系のQuadroではどちらのドライバも動くのでそんな心配は無いんだけどな。


gpuz_rv370gl
 正常に認識されて体制は整った。何かベンチマークでも動かしてみようか。公開はしていないがV3200の時に取ったベンチマークがあるので比較してみるか。CPUはここで修理したSLA8Z@333である。


bench_V3100_3200
 PCI-Eのカードと言っても中身はAGPのR300シリーズなので速度に誇るべきものは全く無い。ビデオカードの歴史的にはAGP⇒PCI-Eの過渡期的な製品と言う位置づけだ。中身がAGP石という事で「AGPでしか動かないベンチマーク」も動かせる。V3200とV3100の差は当然ながらクロック分だけだね。

 ちなみにVGA時の消費電力は8Wだった。これはPCI-Eのカードとしては極めて少ない。発熱も勿論最低ランクなのでファンレスもアリかな。


★終わり
zenkei_ms8964
 修理完成したFireGL V3100である。完全に洗ったし、グリスは中華最高グリス(笑)HY-1になったし。粗末だけど結構気に入っているのだ。

 このカードの正体はMSI製のMS-8964(Ver1.1A)だった。基板に番号が書いてあるし、検索すると同デザインの赤いリテール基板が存在している。きっとX300〜FireGL V3100まで色々なバージョンがあるのでしょう(X600も同じか?)。速度的にはATIと言うかPCI-Eカードの最低ランクに位置するが、HSDLでは気楽に使える省電力カードとして今後も使われるだろう。