HSDLでは実験機・ゲストPC(バラック)には通常バックアップ電池(CR2032)を入れていない。常時動かすマザーボードが一杯有るので有害ゴミが増えるからだ。ご存知の通りこの電池はSB5V電源を切らない限り必要はない。だが実験等でリセットでは復活しなくて、完全に電源を落とさねばならない場合も多々ある。この場合、例え数秒であってもBIOSクリアされるので再セッティングが非常に面倒だ。特に時計合わせはいつも面倒くさいね。

 そこで最低でも10分程度はバックアップ内容が消えない工夫を考えてみる。デジカメだって電池交換の時はバックアップされているのだから。完全を期せば充電池にするしかない。しかし普通の小型充電池は1.2Vが多く、バックアップに必要な3Vにするには巨大になりすぎるしカネもかかる。という事で安価なEDLCの出番となった。実際は「昔何となく買ったEDLCが余っていたから使いたい」という、HSDLでは毎度お馴染みのパターンだ(^^


★EDLC(Electric Double-Layer Capacitor)
fyd
 これが件のEDLC(電気二重層コンデンサと言う)トーキンFYD5.5V0.10F。詳しく調べていないが、現役でも古い奴だと思われる。この分野は現在の最先端で日進月歩なので、性能や容量は最新の物よりは落ちるハズ。電解コンと同じく極性があり黒マークがマイナス極だ。実装には少々脚が短か過ぎるので足さねばならんな。

 EDLCは放電特性がコンデンサそのもの(直線的に落ちる)なので、果たして電池の代用として使い物になるのかどうか?バックアップ可能の下限電圧がどの位か判らないが、SRAMの定格動作とすれば3.0V位だろう。実際は2.5V位でもバックアップできている場合が多いが、理論的には信号電圧の閾値よりは上でなくてはいけない。明確な根拠は無いけど、消費電流は10μA以下だと想像する。ここでも書いたがイソテル様計算では3μAの見積もりだ。FYD5.5V0.10Fの30分値で0.15mAという事は25時間保つことになる。ま、この計算通りに行くことはまず無いだろうが、机上で計算などしていないで実験あるのみだ。


★実験回路図
 実験台には壊れても良いマザー、というか既に一部壊れたマザーであるSAHARA3810を掘り出してきた。ATX準拠マザーならこれでなくとも回路は同じ。ちなみにこのマザーのサウス部分にはICH2が搭載されている。

vbat1
 元回路は大体こんな感じ。これはイソテル440BXリファレンス回路であるが、ICHやスーパーサウスを搭載したマザー(P6以降のマザーは全てこれ)なら大体こうなっている。回路図の日付が2009年って…いつから放置してるんだよ(^^;


vbat_sahara3810
 これがSAHARA3810の電池周り。この改造を行うためにはまず逆流防止ダイオードを発見しなくてはならない。この写真だと中央の3本脚のD10がそのダイオードである。右下に見えるのがCMOSクリア用ジャンパ。右上に見えるU13は82559であってICHではない。


r144
 SAHARA3810が普通と違うのは、電流制限用の抵抗R144が何故かチップセットの脇にある事だ。何で抵抗だけこんな所にあるんだろう?電池から10僂らい離れているのだが、またここから電池脇のSBD(D10)に戻る。謎だ。この基板の設計者じゃないと解らんな。この抵抗は今回の改造とは関係ないんだけど、この抵抗の位置が判らないと回路を確認する時に困るんだよな。


cr8b1
 参考までにWS440BXはこうなっている。1kΩも分りやすく傍にある。この回路は775以降のマザーでも同じようなモノだ。今回の改造はオールラウンドに適用できる。


vbat_mod
 単純に電池をEDLCに置き換える。まず電池ボックスを取り去った後EDLCを取り付け。勿論そのままでは逆流防止SBDの働きにより充電されないから、SBDの1ピンと3ピンをショートする。この場合はA、Kとシルク印刷されている部分をショートする。EDLCがリード線で高い所に浮かんでいるのでピントがボケてるな(^^; 何でこんな奇々怪々な実装法なのかというと、これをそのまま他で流用する計画が有るため。

vbat2
 改造後の回路はこうなった。このRTC部分の回路は上の440BXのモノだが似ているのでそのまま流用(^^; さあテストしてみよう。


★テスト
 電池が付いていないので気分的に落ち着かないが、電源を入れて時計を設定してから電源を切ってみる。これで消えなければ取りあえず作業は成功だ。テキトーに1〜2分間隔をおいてから電源を入れたが時計は全く遅れていない。少なくともEDLCは正常に働いているようだ。

 気を良くしてメシ食ったりしている最中もずっと電源を切って放置しておいた(大体2〜3時間)。電源を入れてみるとこれでもまだ消えていない。この調子なら翌日まで持つかもしれんな。今度は明示的に時間を測ってみる。22時から翌日の6時までの8時間、電源コネクタ(ATXコネクタ)を抜いて完全にマザーボード単体で放置する。8時間の根拠は一晩寝ている間という事だ。これで翌朝電源を入れたが時計は全く遅れていない!

 消費電流はイソテル見積もりで良いのか?とするとこのEDLCでも24時間くらい持つかもしれないな。更に厳しく24時間以上放置してみよう。具体的にはマザーボード基板単体で静電防止袋に入れて、保存状態のままで丸一日以上放置したのだ。これで消えていなければ組みっぱなしではなくバラしても大丈夫という事になる。結果は全く問題無し!計算通り24時間程度なら持つようだ。

 これはもう完全実用化レベルと言って良い。取りあえずHSDLの当初の目的は完全に果たせたので「最長でどこまで行けるか?」は調べていないが、いずれ限界は感覚的に判ってくるだろう。ICH2が特に省電力と言う可能性もあるが、各社サウスはモバイル対応のため省電力化の努力をしているので大丈夫なんじゃないかな。いずれはイソテル以外の他社チップセットでも試してみたいところ。


★作戦成功(^^
 取り付けスペースの制限もあり外観が多少悪くなるが、セミ・バッテリーレスの使い勝手を手に入れるためなのである程度は仕方が無い。ちなみに毎日必ず使う常用マシンならばこの改造は特に意味は無い。電源のメインスイッチを切らなければ良いだけの話だから。でも大部分の人は貧乏性で切ってしまうんだよね(^^;

注:この記事に限らずHSDLの記事は改造を推奨するものではない。回路知識が無い人、部品の特性が解らない人はマネしないように。この記事の場合、バカやってCMOS部分が壊れるとマザーはもうお終い(修理不能)だという事を忘れずに。ま、ジャンカーだから壊して勉強するのも良いかと思うが。