セラミックフィルタと他フィルタの違い


 CFはメカフィルやクリスタルフィルタなど高性能フィルタよりはるかに安いけれどもLCフィルタとは比較にならないくらいアタマが切れる。つまり帯域幅が狭い。そのため回路を安くあげたり手抜きしたいメーカーには必須のアイテムである(^^ ここで各フィルタの特徴や欠点を挙げてみる。

=LCフィルタ=
 IFTである。1段では頭のキレが圧倒的に不足。絶対減衰量は離調すればするほど帯域外は減衰していくので段数さえあれば問題無し。正しく使われていれば跳ね返りも無いしスプリアスも無い。経年で調整が微妙に狂う場合があるが、ほぼ老化はしないので調整し直せばいい。比較的安価である。

=CF(セラミックフィルタ)=
 頭はキレるが跳ね返り(リプル・スプリアス)がある。またある程度までで減衰が頭打ちになる(=絶対減衰量の不足)。1段では絶対減衰量が全く不足なのでIFTレスはクレイジー。イメージより老化が早く中心周波数が微妙にズレて損失が増えるのが普通。SSB用など一部高級品を除いては非常に安い。

cfwla455kefa_sp
 帯域外の跳ね返り。650kHz辺りのは-30db程度なので無視できない。また絶対減衰量は-50dbを過ぎると頭打ちなのが分る。これは斑多のカタログデータからだが良心的なグラフですね(^^ もちろんCFWLA455だけでなくどの品種でも他メーカーの製品でも必ずスプリアスはあるし減衰量も頭打ちになる。これはこの製品ではなくCF自体がそういう特性なのだ。高額なフィルタでも絶対量の違いはあれど性質は同じだ。

=XF(クリスタルフィルタ)=
 上に比べスカート形状は良い。跳ね返りはあるがそれほど気にならない。絶対減衰量はまあまあ。老化はしにくい。欲しい周波数のモノが売られておらず、特に低い周波数のモノが殆ど無いのでほぼ特注品となる。比較的大型で高価であることもマイナス材料。少なくともラジオでXFが最終的な帯域決定に使われた例はICF-2001以外には知らない。FMチューナーではTRIO製で見た事がある。

=MF(メカニカルフィルタ)=
 形状がよく跳ね返りも少ない。絶対減衰量も概ね満足できる範囲。但しメカニカルな部品なので経年劣化は激しい。しかも製造者が少なく非常に高価な上に入手難である。一般ラジオでこれが使われた例は無いだろう。筆者は自分で入れた事があるがな(^^


 やはりLCにCFを組み合わせるのが一番経済的かつ効果的である事が判る。良心的なラジオはそうなっているがTA2003系のようにIFTを省略している無謀なのもある。弱電界ならそれで良いかもしれないけど。

CFWS_SFZ_hikaku
 高級CFの特性。上は一般的な安めのSFZ455である。下はやや高級なCFWS450である。5kHzほど中心周波数は違うが結果は同じなのでこれで説明する。

 上のSFZは頭がキレるがスカート特性が悪い典型だ。MWの標準である±9kHz離調しても-40dbまでしか下がらない。これでは70〜80dBμを越える強力局を完全に分離するのは不可能だ。それに対し下のCFWSは9kHz離調で-70dbを越える減衰量がある(注1)。これならソコソコ強力な局でもスッパリ切れるはず。帯域幅自体は上のCFの方が狭いので、下のCFは「選択度が高く音も良い」という理想の特性を可能とする。と言うよりは上のCFが「音が悪く選択度も低い」と言った方がイイかな。CFはカタログの帯域幅だけ見ていては本当の性能は分らないのだ(注2)。


 次回はいつになるか分らないけどセラミックフィルタの狭帯域化について書く。恐らく読者の想像とは違うものだが(^^


注1:帯域外の跳ね返り、スプリアスがあるので単体では完全とは言えない。

注2:カタログでは都合の悪いところはグラフで切り捨てられているので本格的には自分で調べるしか手が無い。絶対減衰量は大きければ大きいほど良い。と言っても-100dBを越えると意味は無くなるが…。そのくらいになるとIFフィルターだけでそれ以下にする事が出来なくなる。特に帯域幅切り替えにダイオードスイッチを使っていると不可能だった。筆者は過去にそれで非常に悩んできた。