これまではER-C54Tを取り上げてきたが、ER-C5xTシリーズが生産中止になったため54Tの方はノーマル保存に回し、複数所有しているER-C55Tを弄る事にする。そのためER-C54Tの記事は前回で打ち切りとして、アナログダイヤルのラジオは同じ2003系のRAD-F1691Mでやる。

ELPA ER-C55Tの解析


ER-C55T受信音
ER-C55T受信音
ER-C55T受信音
ER-C55T受信音
ER-C55T受信音


erc55t
 ER-C54Tのデジタル版とも言うべきER-C55Tである。中身は周波数カウンター部を除いては同一だろう。但しプリセットデジタルカウンターを搭載しているため改造に制約が出てきてしまうのだがそれはまたいずれ。

erc55t_furyou
 余談だけど実は最初に買ったER-C55Tは不具合品だったことが判明した。2号機との違いは液晶の"TUNE"表示が出ないこと。筆者は介護を必要としないので存在すら知らなかったのだ(マニュアルに書いてあったっけ?)。強力局に合わせても全く表示が出ないので何らかの不具合なのだろう。今から交換してもらってもよかですか?(^^; それも面倒なのでこのまま行くか。でも今後はケチが付いた秋ドヨで買うのは止めよう。データ重視の生活を送っていても非常に縁起を担ぐ筆者なのだ(^^


★概要
 回路の概要はELPA ER-C54Tと同じなのでそちらも読んでもらうとして簡単に済ませる。違いはプリセットデジタル周波数カウンターユニットだけである。これはSC3610という定番ICを使用しており、回路もリファレンス回路そのもので解析する必要も無い。

 C54TもC55TもTA2003Pという倒芝のワンチップ・ラジオICを使用する回路だ。TA2003PはIFTレスで未調整であるところに大きな意味がある(注)。IFTはパーツとして高価なだけでなく、その調整が必要という大量生産には致命的な欠点があるのだ。我々には関係無いけどね(^^

 構成はシングルスーパーという事で性能は「それなり」であり、どんなに頑張ってもIC以上の性能のラジオは出来ないわけで、使う前に内部を見ただけで性能の限界が判ってしまった事になる。更に止めを刺すとこのICはDAISOの300円ラジオに使われていたモノと書けば大体判るか(^^

 TA2003のメーカー想定はMWだけでなく、OSCコイルの変更で22MHzまで受信するSWラジオのアプリケーションも考慮されている。それをそのまんまズバリ取り入れたラジオという事になる。但し倒芝の4バンドアプリと違ってバンド数は12バンドと多い。

HR-K71
 参考までに、このラジオなんて見る前から2003系だと想像がつく。ICの受信周波数範囲と同じだからだ(^^

注:オリジナルの東芝製は既にディスコンで、これはUTCなど複数の中華メーカーのセカンドソース若しくは違法劣化コピーである。少なくともCD2003GPは結果を見るとオリジナルと同性能になっていない。ハッキリ言って同等品とは言えない代物だ。

 稼働電源電圧は1.8〜7Vと広く、1.2Vのニッスイ2本で充分駆動できるラジオとなる。電源オフ時にも時計が出るので電力消費があるところがC54Tとの違いだ。長期使わないときは電池を抜いておかないといつの間にか空っぽになる。恐らく終止電圧以下まで放電される。つまりアルカリ電池だと中身を吹いたり、ニッスイ充電池だと過放電でお亡くなりになる。使わないなら電池は抜きましょう。電池を入れたまま表示が出なくなっていたらヤバいです。

 TA2003PはTA8164Pとピンコンパチである。どこが違うかと言うとTA8164Pの方はRF段が無い。加えてTA8164Pの方はIFT使用の一般的なICだ。AM(FM)-RF_INピンからの信号はTA2003はRFアンプに、TA8164の方はダイレクトにミクサーに入力されている。勿論感度では2003の方が有利だろう。8164の方が多信号特性は優れているかもしれない。少なくとも中華偽造品よりはレベル配分がマシだろうな。トランジスタラジオ程度のアプリなら破綻は無い。

 ゥ團鵑AGCのピンである。ここに付いている電解コンデンサ(デフォ33μF)で時定数が決まる。ブロック図に拠れば8164との互換性からか2003のRF段にはAGCは掛かっておらずMIXとIFだけに掛かっている。ここの電圧を読めば針式のSメーターも可能だ(^^ 昔だったら早速やったと思う。

 Д團鵑坊劼っているCF1がAMのセラミックフィルタで、┐坊劼っているCF2がFMのセラミックフィルタである。リファレンス回路ではAMはSFU455C5、FMはSFE107MA5Lとなっている。どちらも最底辺のCFなので、仮にもしこれと同じものが使われているとすれば選択度には期待できない。勿論これを交換してナロー化を図るのはアリだが、その際はインピーダンスと損失が元と同じでなければならない。インピーダンスが合わないとスカート形状やリプル特性が大幅に乱れ交換の意味が無くなり、損失が合わない場合は極度の感度低下を招いて実用困難となる。通常高選択度のCFほど損失が大きい。またこのラジオは安定度が低いのでその対策も考慮する必要がある。高選択度になればなるほど安定度の問題は大きくなる。具体的には短時間で周波数がズレてターゲットが帯域外に去り聞こえなくなる。このラジオはSW帯も受信できるので高選択度のCFを入れたら悲惨な事態になるかもしれない。つまり安物ラジオでは選択度を上げてはいけないのだ(^^

 ラジオの回路的にはリファレンス回路とほぼ同一だ。この合理的と言うか安易さが中華の良いところだ。日本メーカーのような妙な独自技術は無いので、データシートのリファレンス回路と突き合わせれば回路の疑問点は皆無だ。パーツもリファレンスと同等品が使われているはずで、不良修理又は改造等で交換する時にも悩むことは無い。

 昔ながらの単純なこのラジオが致命的に壊れるとするとまずデジタル表示部分かポリバリコンかな。ポリバリコンが経年劣化して使用不能になるのは既に日本メーカー製でも多数確認されているが、中華製は更に短期に絶縁不良になる場合がある。絶縁シートが取り付け部分から引きちぎれて回ってしまったのを見た事がある。これと同等・同サイズのポリバリコンを探すのは少々骨が折れる。ラジオ回路のメインICはまだ安価でいくらでも売っているので死んでも交換要員には不安は無い。予備を買っておいた方が良いのか?でも壊れるとすればICよりデジタル表示やポリバリコンの方が先だと思う。デジタル表示はSC3610なので交換もできるが形状が違うかもしれない。

 カウンターICは定番のSC3610Dである。IFがAM=455kHzとFM=10.7MHzに特化したプリセットデジタルカウンターで、時計とタイマー機能が付いている便利なICだ。経年でブチ壊れやすい沖のMSM552xよりは良さげ(^^欠点はプリセット周波数が変えられないこと。せめてジャンパを飛ばして450、455、460程度に可変できれば最高だった。

 他はC54Tと同じなので省略する。HSDLのは生産ロットが近いので機能部品その他も全く違いは無い。但し二度目の入手によりこの製品もロットに依って大きな差がある事が判った。当然ながら後になればなるほど品質は低下するものと思われる。ま、この手の製品は当たりハズレも楽しまないといけない。気にするとハゲますよm9(^^


★受信周波数範囲の実測
 気温やダイヤルの回し方に依って微妙に異なるが、この時テストした限りでは下のようになった。冬になったら変わりそうな予感(^^;

SW1:3.57-4.37
SW2:4.44-5.36
SW3:5.73-6.75
SW4:6.83-7.89
SW5:8.98-11.00
SW6:11.45-13.20
SW7:13.10-14.82
SW8:14.79-16.96
SW9:17.27-19.72
SW0:20.63-23.24
FM:74.6-108.2
MW:508-1622

 概ね仕様と差異は無いがFMとMWは下限をもう少し上げたい気もする。SWは一つのコイルで複数のバンドを兼用しており動かすと滅茶苦茶になる可能性が高い。基本的に受信帯域は狭い方が性能が上がる。正確に言えばトラッキングエラーが少なくなる。これはトラッキングを厳密に取り直そうが何をしようが変わらないので欲張って無暗に広げない方が良い。ビンボーくさい人は広げるのが好きだからなあ…あ、昔の筆者の事か(^^;


★聞いてみる
 受信可能な局は前回のER-C54Tとほぼ同じだった。ただMWでは個体差で1200kHz以上の方の周波数がよく、900kHz以下の周波数は良くなかった。FMはほぼ均一で良好、SWは均一で不良だった(^^;

=FM=
 RAD-S600Nには選択度で負けるがER-C54Tとほぼ同じ感度。ベランダに出ると感度は急激に上がるが多信号特性が悪いのか上の方で強力局のお化けが出る。選択度も悪いので強力局の隣に出ているコミュニティ局は潰される。当地では東久留米85.4MHzがさいたま85.1MHzに潰されてほぼ受信できない。CFだけでなくAFCの弊害もあるが改良の余地があるね。

=SW=
 RAD-S600Nには全く敵わないが、ER-C54Tと同じく強力な日本語放送は受信できる。但し窓の外にロッドアンテナを出すのは必須条件。ある程度ノイズ源を離す努力も必要だ。これは高性能ラジオでも同じなので当たり前。トップのアンテナコイルの差でER-21T-Nよりは性能が落ちる。RFの選択度は広帯域でスルーに近く、朝鮮中央放送程度で混変調気味になった事もある(^^; 使っていて思い出したのは倒芝TRY-X1600かな。RP-770Fの流れを汲む周波数直読ラジオの草分けだが、それに見合った受信性能が無くてあまり意味が無かった。このラジオも周波数は5kHz直読だが選択度が悪いのであまり意味を成していない。

=MW=
 鉄筋のHSDL内ではローカル局以外は窓際に寄るかベランダに出ないと聞こえない。やはり室内ではアンテナが欲しいところ。トラッキング調整は行なわれていないらしく要調整だ。現時点でもローカル局しか聞かないならば問題はないが、そういう人がこのSWを受信できるマルチバンドラジオを使うのはおかしいと思う。


★続く
 シロートが弄繰り回せるのもアナログラジオならでは。PLLやらDSPやらのデジタル技術の入ったラジオでは簡単にはいかない。実用しないのであれば(笑)やっぱりアナログラジオが最強と言えるだろう。中華に於いてもこの手のアナログラジオは2020年あたりまでには確実に全て消えるだろう(場合によってはもっと早いかも)。そうなる前に手に入れて目一杯楽しんでおきたい。