この記事は「ラジオを製作・組立した事がある」「ラジオの回路に深い関心がありスーパーヘテロダイン方式について理解がある」「感度・選択度・安定度・多信号特性について其々完全に理解している」「HSDL用語集を全部読んでいる」「前回までの記事を全て読んでいる」の条件を全て満たしていることを読者の条件とする(リンクについての条件はこちらを参照)。

逝かれた、というか逝かせたRAD-F620Zを修理する(^^;


RAD-F620Z
RAD-F620Z
RAD-F620Z

 前回調査で改造する以前に正常に組み立てられていない事が判明した。おまけに作業の不手際でフェライトロッド・アンテナを破壊してしまったためその修理を行なわねばならなくなった。そのため今回は修理作業という事になる。


★フェライトロッド修理
 まずは折れたフェライトロッドを繋がなくてはいけない。以前フェライトコアを繋いだ時は100円ショップのシアノアクリレートを使用したがアレは固くて脆いので、出来ればある程度粘りのあるエポキシ系の方が良いだろう。あまり柔らか過ぎると今度はヘナッと曲がりそうだが…。新たに買うのはイヤなのでCF接着で余っているシアノアクリレートで貼りつけた。


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 瞬間接着剤と言っても実際このようなモノは空気に接しないので瞬間とは行かない。一見上手く行ったけど前回と同じくこのままだといずれ折れるだろう。早めにコイルを修理してトラッキング修正を済ませなくてはいけない。一旦実装してしまえばコイルが被さるので容易に折れないはず。


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 コイルは元々ユルユルなのでサポーター代わりに補強テープを巻いておいた。これでもまだ巻き足りないくらいだ。ユルイと動きやすいからいずれもっと巻きたい。


★コイル修理
 次は更に難易度の高いコイル修理である。まずはどこが切れているのか確認しなくてはいけないのだが…。


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 このフェライトロッドアンテナはタップ方式だ。出力はポリVCが繋がる線が2本で出力タップが1本の合計3本である。この場合は導通の組み合わせは白(というか透明)⇔赤、白⇔青、青⇔赤である。テスターでチェックしたら赤が通じていない。見た目はどうという事は無いがどうも接触が悪いらしい。線を短く詰めてみたらキッチリ導通するようになった。コイルの中間が断線したのでなくて良かった。中間が切れると修復は困難だし、仮に直っても性能が低下する。


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 この作業で判明したがリッツ線は3芯だった。この本数が中華のデフォかな。7芯リッツ線に巻き直しは行なわない(注1)。それをやるくらいならフェライトロッド・アンテナを丸ごと交換する。市販されている多芯リッツ線の価格とフェライトロッド・アンテナの価格は実は大差無い。中華製のは巻き済み完成品でも安ければ税別300円しないのだから。

注1:ちなみにTA2003P指定のリッツ線は7芯(0.07φ×7)である。厳しい事を言えば3芯では指定のQにならず、従ってTA2003P本来の性能も出ない事になる。

★配線修正
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 修正は簡単で青と赤の配線を入れ換えればいい。しかし我々は赤を以前接続されていたランドには落とさず直にVCに繋いだ。コイルはVCと共に同調回路を構成するので、元の配線よりこれが本来あるべき正しい配線と言える。アナログ回路ではグラウンドに落ちていれば何処でも良いわけではない。位置によってDCされたり効果が大幅に変わってくるのだ。

 この作業によって感度は回復し、しかも感度が上がったにもかかわらず混変調・相互変調も各所で減少した。この事実はノーマルのアンテナ同調が丸っきり狂っていたのを表している。F1691Mの時も思ったが前ユーザーはよくこれで何年も使っていたものだ。もしかして「中華製だからこんなモノだ」と思っているのだろうか?そんなわけないでしょ。中華だって正常な製品は普通の性能だよ。ICラジオ(現在売られている物全て)の感度差はICが同じならフェライトロッド・アンテナの差しか出ないので、極度に低性能だったらそれは製造不良を疑った方が良い。妄りに裏蓋は開けずにメーカーまたは販売店に問い合わせるのが一番だ。中華製はメーカーの分らない輸入品なんて買ってはいけない。もし買うなら自分がサービスマンになる覚悟が必要だ。一般人には無理だろうけど、この記事を読んでいる人はそれが可能な人だけなので大丈夫かな(^^


★局発ズレ
 この個体はバンドの下の方に余裕がない。具体的に言うと531kHzがダイヤルを一杯に下げないと受信できない。これはかなり大幅にズレてますね。上は目盛が細かくて狂っていても判らないので周波数範囲を合わせる時は下重視で行かなくてはいけない。

 周波数の下限を合わせる時はT1の赤いコア、同じく上限を合わせる時はPVC上のTC3で合わせる。カバー範囲を欲張ると性能が落ちるので規定で止めた方が良い。トラッキングは幅が狭い方が合いやすい。合わせるのは下が510で上が1680kHzくらいかな。上下共に一杯に回して止まったところ、上はテキトーでも大丈夫だけど下だけは正確に合わせなくてはいけない。スケールは元々正確ではないので拘らないこと。基板を外すとスケールは見えないので、このラジオに関してはスケールを見ずに周波数カウンターで合わせた方が良いのかも。


★トラッキング調整
 トラッキング調整を放送波で行なうのは難しい。ジジイ時代のラジオ製作本に「放送波でトラッキング調整を行なうと一週間くらいかかる」なんて書いてあったくらいだ。なお完璧に合わせても最大数kHzのズレが出る。親子PVCで完全にトラッキングさせる事はできない。VCの容量は変えられても変化量は変えられないので理論的に不可能なのだ。ソコソコ合ったら諦めるしかない。

 で、トラッキングを少し取りなおしたら感度が急上昇した。いやもう本当に「今までお前は一体何をやっていたのか?」と疑問を感じるくらい上がった。しかし完全に取りなおすのは不可能だった。何故かと言うとフェライトロッドからコイルが大幅にはみ出してしまい合わせられないのだ(^^; つまりフェライトロッド・アンテナのインダクタンスが高過ぎるのだ。これは巻き直しの予感!イヤコイルごと交換かな…。それでも現時点でもF770Zと同等以上の感度を発揮している。ただ単一×4ではなくAC電源を使っているからかも知れないがやたらノイジーになっているのが気になる。まるでF1691Mの初期の頃のようなのだ。これは次回調査する。場合によってはAC電源の改造と言うか作り直しになるかも知れない。


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 そもそもこのアンテナホルダはイカンな。アンテナを固定するとコイルが動かせないのでトラッキング調整は事実上不可能なのである。これを見ると最初から調整をヤル気が無いのが見え見えだ。恐らくインダクタンス固定で決め打ちしているのだろう。あとはTCで真ん中一点調整かな。


★続く
 不具合修正してスッキリしたが、実際はこれが本当の姿で今までは損していただけ。やっとスタートラインに立てた気がする(^^;