「OHM RAD-F050M」HSDL初のライターサイズラジオ


 傷だらけでケースも変形するほど摩耗している「中古ランクD」の100円ラジオだが、筆者はライターサイズラジオの中を見た事が無いので見てみたかった。当初はFM専用かと思ったがそうではないようだ。


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 RAD-F050M-Wである。最後の-Wは水色という事だろう。外見はVR、ダイヤルと2つのSWだけだ。特に見るべきものは何も無いライターサイズラジオだ(^^; しかしカタログデータに拠ればFMはステレオらしいので激しく興味がわく。

 謎なのはこの製品はAM/FMの2バンドラジオなのに、当該個体はAMの周波数スケールが無い上に型番表示も無い。ひょっとしてFM専用の別製品があったのだろうか?でもバンドスイッチは生きているんだよなあ。

 カッコ良いわけでもないし眺めていて面白いラジオではないので、消毒したあとで電池を入れてイヤホンを繋いで電源を入れてみた。がしかし全く電源は入らなかった。不動品かよ!まあこの店は動くのはこんなモノでも300(324)〜500(540)円で平気で売るので100(108)円なら動かなくても不思議ではない。でもICラジオなんて壊れるもんじゃないんだよな。当初よりバラし用として買ったので解剖するしかない。動かなくても泣かないと思う(^^


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 ネジは2本だけ。あとは篏合である。小さくてチャチなので割らないように気を付けなければ…。


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 何じゃこりゃぁぁあ?!コイルがグチャグチャではありませんか。よく見ると何と線が切れてやがります。コイルの線が真ん中で切断されたために解けてしまったのだ。自然に切れた?イヤそれはあり得ない。恐らく誰かが開けた時に切ったのだろう。この時点でAMは死亡確定だ。


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 隙間からPVCが見える。判ってはいたけど正真正銘のアナログラジオだね。


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 本当にヒドイ。ICなどは裏になっていてわからない。では基板を起こしてみよう。


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 これが基板の被さっていた方。ケースも部品も汚いので全部洗う。


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 キター!トランスやらコイルやら、ICも二つ見えて実装密度が高いことに驚く。とても1000円ちょっとで買える安物には見えない。基板は安い奴だけどね(^^;


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 電解コンがタンタルだよ!もっともこのサイズだとMLCCを除けば電解コンはタンタルくらいしかないのも確か。22μF2.5Vという他に使いまわせない低耐圧だ(^^; 電解コンは大容量のもの以外はタンタル電解だ。中華ラジオでこんなの他に有ったか?いや中華だけでなく日本メーカー入れても初めて見たよ。


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 AMのCFはF455CHと書いてある。これは2エレメントのものでSFU455Bよりは格上だ。エロパではおなじみだが鸚鵡にもあったのね。元々は斑多PFB455JR相当品だ。これなら選択度はソコソコ良さそう。


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 これはAFアンプのCD8106GBだ。うむ確かにステレオのアンプだなあ。カタログに偽り無しか?


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 ラジオ用ICはこれか。写真では見えないが(^^; どうやらCD7766CBらしい。FMステレオ用のICだね。

 え、でもおかしくない?だってTA7766(CD7766CB)ってFM専用のICよ?なんでフェライトロッドアンテナやCFやIFTやOSCコイルがあるのよ?スケールがFM専用だからAM側は潰してあるのだろうか?もしそうならAM用の部品は実装しないだろう。日本メーカーならともかく中華メーカーがそんなバカな事をするはずがない。そもそも7766にラジオの受信機能は入っていないのだ。ついでに言うともう一つのTA8106(CD8106GB)はステレオヘッドホン・アンプでありラジオICではない。という事はどこかに本命のラジオICがあるはずだ。


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 黒いスケールの下敷き板を外したら出てまいりました。これはTA7792(CD7792CB)だ。下の方は0.95Vから動く驚異のラジオICだ。低電圧の代償として滅茶苦茶歪みそうな気がするが…(^^; もちろんAMもFMも両方受信できる。

 バンドスイッチもあるし、これはもう間違いなくAM・FMの聞けるラジオだ。何でMWバンドのスケールが無いか?何故型番が無いか?ひょっとするとFM専用ラジオとしてどこかに卸したのかもしれない。更に穿って考えればアンテナコイルの断線もわざと切ったとも考えられる。そんな事をして意味があるのか?と言われれば「無い」のだが(^^;


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 FMのCFは中華の1エレ。IFTも入っている。これはまあ標準的だな。


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 この辺りが面白いところ。ポケットラジオの常識的な手法だがイヤホンをFMアンテナにする工夫がしてある。日本メーカー製も大体こうなっているね。いずれHSDLでもこれを実用化したい。


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 もう一度組み立ててみた。流石にこのくらいの規模だと完全にバラバラにしても再び組み立てるのはワケは無い。完全に洗ってキレイになった上にSWその他各部の動きも良くなった。試しに電源を入れてみたらちゃんと入るようになった。故障ではなくタダの接触不良だったか。


★受信してみる
 MWアンテナが切れているので、まずは生きていると思われるFMを聞いてみた。結構聞こえている。79.5/80/81.3/82.5/84.7/89.7MHzなど主要なところは全部聞こえる。もっとも最近は近隣のコミュニティFM局が聞こえないと実用性を欠くのだが。FMステレオだが丁度トークばかりだったので分らなかった(^^;

 AMはアンテナ切れだから何も受信できないか?と思ったがAFN、TBS、NHK1、NHK2は聞こえる。これだけ聞こえるならアンテナを繋げばかなりイケそうな気がする。ヒマがあったら修理というか改造してみたい。受信音はその時にでも録りたい。


★一旦終了
 今までの中華製と違って基板は両面使い切っているしFMステレオだし、こんな小さいサイズによく収めたものだ。電解コンは基本タンタルだし設計だけなら良くできているのではないか。もしヒマが出来たらアンテナコイルを巻き直してみたい。


このラジオは小型のためいつもの20年物のニコポンでは寄れなかったため、不本意ながらマクロ写真(白バック)のみSP-560UZで撮影した。そこだけ写真が良いのはそのため(^^;