この記事はレビュー記事でも懐古記事でも買い物ガイドでもありません。シロート向けの使い勝手などの一般的評価は書いていないので、ラジオ好きで超マニアックな常連の変人以外はお帰りください(^^/~

この記事を読むにあたっては「ラジオを製作・組立した事がある」「ラジオの回路に深い関心がありスーパーヘテロダイン方式について理解がある」「感度・選択度・安定度・多信号特性について其々完全に理解している」「HSDL用語集を全部読んでいる」「前回までの記事を全て読んでいる」を条件とする(リンクについての条件はこちらを参照)。

どう見てもジジイの遺品としか思えない不動の昭和ラジオ(^^;


 マネ下ラジオも20世紀終盤から主にオワタ音響の代理設計・生産?に成り下がってしまったみたいで、オリジナル設計・製造好きな筆者としては面白くない…って事も無いけどやはりマネ下オリジナルも見たいのである。そんなある日、どう見てもディスクリート時代のナショナル製品を見つけた。壊れているけど何とか買えそうな価格だったのでゲトしたのは言うまでも無い。ちなみにカテゴリの「レトロラジオ」は昭和時代というか80年代以前に製造されたラジオを指す。


★素性
 検索すると上の方に出てくるブログに1977年発売と書いている人がいたので一旦信用してしまったが、実は1976年にグッドデザイン賞を受賞している。まだ発売されていないモノが受賞できるわけは無いので1977年発売は全くの出鱈目だ。

 それどころか販売店・修理店向けのテクニカルガイドが昭和50年12月の日付になっている。1975年12月には既に発売されていたのだろう。イソターネットの記述を直ぐに信じてはいけないと再確認した。上のブログの影響で1977年発売と書いてしまっているブログがあったので悪性の黴菌みたいに間違いが繁殖しつつある。このようにデマや間違った知識が堆積していくのだな。確かなものはカタログなどメーカー発表か公的な記事しかないと考えた方が良い。

 カタログ仕様でも同調指示以外の機能も何も付いておらず、廉価な大量売り用のラジオだったのだろう。もっともそんなモノでも8900円もしたのだが…(^^; 当時のゼニの価値からすればマン振りだわな。80年代までのマネ下ラジオを殆ど触った事がある筆者的にはこのラジオも見た気がするが、少なくとも電源を入れて使った事は無いと思う。エントリーモデルは全然眼中に無かったというのが正直なところ。けど今見るとエントリーでもかなり骨っぽいのだ。


★外見
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 何とかこのラジオの「内面」を表す写真を撮ろうと思ったが失敗した(^^; 厚ぼったくて重い昔ならではのラジオ。


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 裏の銘板だ。松下電器産業株式会社も死んでるし、ナショナルハイトップ乾電池も死んでいる。ついでに冥土インジャパンも死んでいる。


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 外観の瑕疵は左下隅が割れていること。これは落としたのだと思っていたがそうではないみたいだ。


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 上で「厚ぼったい」と書いたが、それはこのSUM-3電池4本に依るところが大きい。今のICラジオでは考えられないくらい大食いだ。


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 それを補う意味でACアダプター端子が付けられている。これは非常に助かる。


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 操作できるのはモードSW、音質切り替えSW、同調ツマミ、音量調整VR兼電源スイッチだけだ。


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 で、売り物は同調指示LEDだけ。今なら980円だろうが万近い価格だったのだ。ところでこの同調指示ランプは実際は夜になるとほとんど役に立たなくなる。選択度が低いのでどこが隣の局なのか分らないのだ。信号強度も上がって付きっぱなしになる。介護が必要なジジババにはそれなりに支持?は集めているけど筆者の診断ではナンセンス機能の一つと言える。やっぱラジケーターだよな(^^

 見ているだけではつまらないのでACアダプターを繋いで電源を入れる。しかし全く音は出なかった。電源SWを入れるとSPからプツッとノイズが聞こえるので電源は入っているようだ。やはり壊れているのか。直すのも面倒なので捨ててしまおうと考えたが、部品代としては些か高過ぎる価格なので躊躇する。まずは開けてから身の振り方を考えよう。


★バラし
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 さて動かないのでバラしてみよう。TRディスクリートなので故障原因の確定は十倍くらい(HSDL推定)大変だ。実はこのラジオはネジが使われていなかった。粗ニーならともかくマネ下にしては大胆な設計だな。ネジを探して電池ボックス内のシールまで剥がしちまったよ(^^; ICR-S8みたいだがアレよりはスマートとは言えない。この角が割れているのは実は落としたのではなく割る時に破壊してしまったんだな。


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 ここにも冥土インジャパンか。書かなくても判るよ。この時代は海外産の方が少なかったのだから。70年代後半に初めて海外製造を見て「オッこれ外国製だよ!」って驚いた記憶があるから。ちなみに最初に見たのは東芝の半島製だったかな。ここにもちゃんと部品番号が書いてある。マネ下はこの辺り厳しいのか?上場企業なら当たり前か。でもうちはテキトーだったような(^^;


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 ギャー!虫の蛹だよ!何とも外見に相応しいものが出てきやがった。これを使っていた奴の人格がここからも想像できるな。ここはシールドケースに囲まれており、ゲルマニウム・ダイオードも見えるから恐らく検波部だろう。ちなみに蛹の抜け殻は他にもう一つあった(^^;


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 とにかくデカい電解コンが多いので驚く。自社製品の消費のためか?イヤイヤ電解コンは本体の製造じゃないからあまり関係無いか。もしこれらの劣化が不動の原因だったら泣けるな。まあ電解コンが原因で全く動かなくなることはないんですが。


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 注目のフェライトロッドだが…意外と短い…これだとイマドキの製品と変わらんな。この時代の粗ニーならもっと長いのが入っていた。感度も低そうな気がしてきた(^^; けど実際は径が10φと太いので、例の感度ランキングは結構上の方だった。


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 マネ2の2SC828と2SC1359が主に使われている。これらの石はパッケージに丸みがあるのが特徴だ。他に丸みの無い2SC945が一つだけ見える。検波以降の石はこの際どうでも良いので省略(^^ ところで2SC828や2SC1359って不良が出るのか?2SC828はオリジナルを持っているが1359の方は使った事が無い。これは→2SC710⇔2SC380TMで置き換えられるので全く困らない。


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 828を探したら2本しか無かった。一体何に使ったんだろう?何も製作していないはずなのに(^^; ちなみに互換表に拠れば2SC1815、2SC945、2SC458、2SC1740といったおなじみの面々に交換できるらしい。2SC1815が使えるのは嬉しいが、恐らくhFEは下げないと差し替えは無理だろう。GRではなくYが欲しいな(…ってまた買うのかよ^^;)。

2SC828ランク:Q=130-260、R=180-360、S=260-520
2SC1815ランク:O=70-140、Y=120-240、GR=200-400、BL=350-700


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 一本だけ2SC945発見。何故だろうか?828と大差無いのに。これもオリジナルを持っているが交換はしない。


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 2SD227?AFの石である。コンプリの相方が見当たらないが…?志村ー!隣!隣!


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 三罪のマーク入りPVCだ。


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 基板を外そうと思ったら…ウワッこれ不用意に開けたら拙い奴では…。何となく危険を感じたのでバラさず故障原因を推理したい。もうこれしかないと思ったところで初めてバラす。


 よくもまあこんなに無駄の多い商品を作ったもんだ。当時はそれだけラジオが高く売れたという事だろう。筆者もまだラジオ番組を聞いていたからね(^^ 古き良き時代の製品である事には間違いない。


★不動原因の推理
 このラジオはこの時代の一般的なラジオと同じくAMとFMのFEが独立しており、IFが共通になって検波が再び独立し、AF以降は再び共通のタイプだと思う。AMとFMが同時に死亡したという事は共通の部分が死んでいるという事だ。しかしそれはAF以降ではない。何故ならこれの売り物の同調LEDが点灯しないからだ。両方が故障している可能性は皆無ではないが、普通はどちらかが壊れた時点で使用を中止するのでその可能性は低い。という事はIF以前が原因とみられる。IFTに回した跡があるのが気になる。実は前所有者が再調整しようと思って弄って壊したのかもしれない。頭死老にラジオの調整・修理が出来るなら修理屋などは要らんわな。

 という事で次回はまずIFから見ていきたい。さっぱりノイズすら入らないという事でIFTの断線も疑われるな。


★続く
 何とか生き返らせて手を入れて「完成直前に完全爆死→日の出町最終処分場へ!」がHSDLの物件の定型だ(^^ それには何としても一度は生き返らせなくてはいけない。次回は今回の観察結果を元に更に推理してみたい。