この記事はレビュー記事でも懐古記事でも修理記事でも買い物ガイドでもありません。シロート向けの一般的評価は書いていないので、ラジオ好きで超マニアックな常連の変人以外はここでお帰りください(^^/~

SONY ICF-6700とICF-6800の知られざる違い


 外見の似ているICF-6700と6800は回路に幾つか違いがある。PLLとかIFが10.7MHzだとかそういうカタログに出ているような表面上の違いの事ではない。あれは単なる局発の方式の違いや変換周波数の違いであり、実際は両機の回路は局発を除けば信号経路の構成は違いは少ない。ここでは直接受信性能に係わる違いを見ていく。


★AFフィルター・アンプ
 ICF-6700はAFのフィルター・アンプが内蔵されている。これはAMナローとSSB/CWの時に通るようになっており、結果としてAMワイドだけがこれを通らない設計だ。このフィルター・アンプは勿論帯域が狭いわけだが、結果としてAM-NARROWはフィルター(CFU455H)の仕様よりも音が悪くなってしまっている。

 これについては色々考え方はあるだろうが、筆者としてはAMナローもこのアンプを通らないようにしたい。サイドが気になるならAF帯域を削るような姑息な事をせず、正攻法のIFフィルター交換で何とかしたいからである。

 6800にも一石バッファーの形でイコライジングしているが6700ほど大仰なアンプではない一石アンプだ。6700の方が後から出たので改良なのだろうが、何でここだけ少なくないカネを掛けたのか不思議だ。6700もSSB/CWだけ6800と同じバッファーを通せばコスト的に良かったと思う。そもそもこのアンプはSSB/CWはさておきAMナローにはあまり役立っていないし。トーン・コントロールで充分だと思う。

 ちなみにこのフィルター・アンプは音質以外に音量で体感できる(^^ 6700のAMワイドとAMナローでは後者の方が微妙に音が大きくなるのだ。もちろん似たレベルに合わせているけどハッキリ判る。皆さんは気づいてましたか?


★ICF-6800のIFバッファ・アンプ
 バッファ・アンプと言う表現が正しいかどうか分らないが、ICF-6800ではナロー・フィルターが入る時に頭にIFアンプが追加される仕様だ。追加されるフィルターの損失分だけTR一石でゲインUPしようという設計者の目論見である。これは特にデメリットとなる事は無いので変更する必要はない。ただIFフィルターを更に高性能(=多素子・高損失)のモノに交換する時はここでレベルを合わせる事ができるので留意しておきたい。

 ちなみにこのIFアンプも体感できる(^^ Sメーターを注意深く見ている人は気づくのだが、ワイドの時よりナローの方が微妙に針が振れる。つまり微妙にIFゲインが上がっているのだ。損失補填分なので大きく変わらないように合わせているがハッキリ上がる。皆さんは気づいていましたか?


★ICF-6700のIFフィルターのレベル合わせ
 6800無印と同じフィルターを使用している6700には何故か上のIFバッファーは無い。損失はどうしているのか?このままだとIFゲインが下がってしまうではないか。

 実は6700は元々のIF信号レベルがナロー・フィルターに合わせられている。なのでフィルター損失分は補填する必要はないのだ。がしかし、「高損失のナローCFにレベルを合わせたら、ワイドでCFを抜いた時にIFレベルが上がり過ぎるのでは?」と考えるのがHSDLの読者(そう考えなかった人はこれを読んではいけない^^)。

icf6700_cf
 実は6700ではそのためにスルー経路に抵抗(3.3kΩ)が入っているのだ。姑息だがこの方がTRアンプより廉価である(^^ この抵抗を取っ払うとIFゲインが上昇するが、もし抵抗を取る場合はR55をショートするだけではなくR48とR57を除去するのが望ましい。

 またR55をCFW455Hに交換すればICF-6800Aに近似した性能になる(CFU分は負けるが^^;)。このこの改造を行うとモード・スイッチがそのままだとワイドの方が選択度が高くなるのでS2-1を配線変更して入れ換える。いずれにせよインピーダンス・マッチングには気をつけましょう。なおナショナルRF-4800(RJX-4800)も6700と同じ方式で、ナローがCFUでワイドは1kΩ抵抗でスルーされる。ワイドはICF-6700と違って通常IFTだけになるので選択度はTRラジオ並みに甘くなる。


 …と色々書いたがIFフィルター部分に関しては6800Aが一番スッキリとしている(=改造し易い)。旧6800と6700のCFT455は色々な意味(注)で邪魔なんだよなあ〜。


注:CFTのせいでCFスルーしても音が良くならないし、ナローCFに交換するのもインピーダンスや損失面で面倒くさいのだ。ICF-6800AはCFTが無いのでどちらもクリヤーしている。これを解決するにはCFTを通常のIFTに交換すればいい。もっともトランスのインピーダンスとQが判らないので試行錯誤は必要だろう。

 ちなみにICF-6800AはワイドがCFU、ナローはCFU+CFWとなっている。なのでCFUをCFW455Fに換えて、CFWをCFJ455Kに換えると通信型受信機並みの選択度とR-1000並みの音の良さを実現できる(^^ その場合でもCFW→CFJのレベル合わせは必須だ。