この記事は「ラジオを製作・組立した事がある」「ラジオの回路に深い関心がありスーパーヘテロダイン方式について理解がある」「感度・選択度・安定度・多信号特性について其々完全に理解している」「HSDL用語集を全部読んでいる」「前回までの記事を全て読んでいる」の条件を全て満たしていることを読者の条件とする(リンクについての条件はこちらを参照)。

ICF-S60に似ているけどチョイ安っぽい日本製ラジオを解剖する(^^;


 前回のテストはなかなか良かったが、今回はバラして中身を解析する。ついでにダイヤルの不具合が直ればいいな。


★開ける
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 このメーカーの製品なので陰険な篏合が予想されるが、ICF-S60は中級機という事で修理も考えていたのかそのようなワナは無かった。但し組み立て状態で調整が出来ないという致命的欠陥がある。このS19はどうだろうか?


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 蓋は開いたが…爪が全部落ちている?!どうも一度開けられたらしい。それなのに調整が狂っていないのは何故か?実はその後が難しいのだ。この状態では全く調整を弄れないのが幸いしたか?


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 爪が出てきたぞ(^^; 開けやすかったのはそのせいか?全部落ちているのかも。

 不具合の出ているダイヤル機構はギヤと糸掛けのハイブリットだった。つまり糸掛けユニットとバリコンをギヤで繋いでいるのだ。ダイヤル不良なのだがこれは設計が悪く、軸がフニャフニャ(軸受けが浅くて緩い)なので回し方に依ってギヤの間隔が開いてスリップしたり噛むらしい。どうせなら全部ギヤにするか糸掛けにすべきだったな。ギヤに汚い油が付いている。これって元から?違うだろ。この油も不具合を強調するのでよろしくない。スリップするところに油塗るバカが何処にいる?ここに居た(^^;

 これを開けた前ユーザーは基板を見る事ができなかった、或いは最初から見る気が無かったのだろう。恐らくダイヤル不調を改善しようと思ったはず。このギヤの油は恐らく前ユーザーが塗ったと思われる。だが不具合は設計不良によるものだったので本質的には直らない。結果として火に油を注いで使い物にならなくなったという無残な結末。


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 前回「これに日本製の良さは無い」と書いたが、この辺りは日本メーカー製であることを顕著に表している。中国製ならシールドなんて絶対にしないよ(^^; この辺りでもう気づいたけどICF-S60とは似ても似つかない中身だった。かなり思想が古い。


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 この先が難しい。ダイヤルユニットから基板が剥がれないのだ。この時点でこの生産はクソだと評価してしまう。この基板を剥がなければ調整できないのに剥がれないのだから。


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 やはり高感度の要因はフェライトロッド・アンテナだった。現在ではあまり見られない長いものが入っている。HSDLのお馴染み精密計測(笑)に拠れば7.8φ×98个世辰拭8称8φ×100个覆里任靴腓Αフェライト指数は764となりICF-S60(792)とRAD-F620Z(700)の間の10位にランクされる。リード線の処理は流石にキッチリしている。中華にはここを見習ってほしい。上手くやれば数dBは改善されるはず(^^;


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 SPは安物っぽい。しかしハンディラジオとしては充分に良い音がするのはSPグリルで手を抜かなかったためか。数少ない美点だ。


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 組み立てるのはバラしの10倍時間が掛かった。実装部品が其処此処に当るのでテキトーに組み立てると基板が付かないのだ。こういう組み立てにコツがいるような製品はダメ。だって一品モノの手作り高級機ではない量産ICラジオなんですよ。この会社で働いていなくて良かった。たぶん設計者をぶん殴っていると思う。


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 あとには中に入っていたカスが残った。これ全部ツメなんだよね…(^^; 誓って筆者の仕業じゃないからね。RF-P50やR-P30のは筆者の仕業だが。

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 やっと元に戻った。電源を入れたらFMは完全に動いたがMWの音が出ない!(^^; 感度が極度に下がっているのでアンテナのリード線若しくはそのハンダ付けを切ってしまったのではないだろうか。またやり直し?また今度な。ちなみにダイヤルは筆者が組み立てたので?だいぶマシになった。今のところ引っ掛かりは出ていない。今回の不具合は{設計が悪くギヤ間に隙間が空く→バカユーザーが油差す→完全不調}というプロセスだ。


★基板
 ここで一番チェックしたいのはICとCFである。


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 ICはA1019とある。SMDタイプのCXA1019Mだ。一般的だね。裏にシールド板が付いているところに日本メーカー製を感じるがめんどくさいだけで特に必要はないよね。それとラジアルリード部品ばかりなのになぜCXA1019Mを使ったのかもよく解らない。まさかシールド板を貼るためだったわけではあるまい(^^; 粗ニーに余っていたSMDタイプを安く押しつけられたか、或いはコストダウンのため積極的にこうしたのか(一般的に面実装部品は安い)。いずれにせよ生産・資材調達の都合だろうけど。


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 455kHzのCFには何とシールドキャップが!なんて馬鹿丁寧なんだろう。飛び込み防止・発振防止・IF漏れ防止と、どれをとってもこんなモノは要らないと思いますが(^^; 中身はSFU455以外に考えられないので確認する必要も無いだろう。何にせよ能力が不足しているのは前回テストの通り。


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 FMの10.7MHzのCFはTDKぽい。これもシングルだからどれでも大した事は無い。この時期に限らずFMのCFはSFE10.7で充分ってラジオ設計の教科書にも書いてあった。もうCFM局は誕生していたんだけどなあ。FMのトップに出来合いのバンド・パス・フィルターが採用されていたのが唯一の見所。イヤ待て、横にある局発?コイルはコア入りボビンじゃないか。これは良いな。ここだけ日本製の良さが出ている(^^


★終わり
 組み立て状態で調整できないところはS60/S65Vと同じだったのでHSDL評価は低い。このメーカーの日本製はトラッキング調整がどれもイマイチなのだが、それってこのような欠陥のある筐体が原因なんじゃないかとすら思える。何故なら同メーカーの中華製は組み立てたまま調整でき、しかも調整が非常に良く取れていて気持ち良いくらいなのだ。筆者がこのメーカーの日本製ラジオに対して憂鬱になるのはそれが大きい。


★追記
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 聞こえなくなったので内部を確認してみたらFRAのリード線が切れていた。PVCのも引き込み線も両方切れている。これでは聞こえるわけは無い。


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 仕方がないので繋いだ。ハンダは乗っていた奴を流用したのでチョット汚いがもうヤル気がしないのでこれで良し(^^; 結果はまた高感度が復活しました。