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レベル1:メタリック塗装が腐食・変質しているER-P26Fの復活(中篇)


汚ラジオの復活(^^

 前回は触れるように洗浄した後バラして中身をチェックした。どうも動かない原因はスイッチや配線の腐食によるものらしい。これなら直るかもしれないな。今回はメインのケース洗いから始める。


★洗う
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 まずはスピーカーの掃除だ。端子は後でやるとしてコーンを磨く。この通り消毒・清掃して問題は無くなった。コーンが現代風に紙ではなくプラスチックなのでこういう荒っぽい作業(水拭き)でも問題無く耐えられるのだ。但しコーンがプラだと強入力時の音が何か変だけど(^^;

 さてケースをどうやって洗うか?ここで登場するのはHSDLがまだPC物件を扱っていた頃にアキバで手に入れたドスパラ(上海問屋)の超音波洗浄機だ。これを使ってメモリやCPUを楽して洗おうと思ったわけだが、試しにHJCLでレンズを洗ってみたら不良品を疑うほど泡が少ないので全く使わなくなった。リベンジでもう一度ここで動かしてみる。


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 この製品はメガネ用の小型品なので通常洗えるのはツマミ類だけである。しかしこのラジオは超小型なのでケースも余裕で洗えるのだ。ポケットラジオ万々歳だね(^^ とは言えホール部分を除いてはあまり効果はないかも。もし明らかに効果があるならもっと大きな奴を買ってもイイか?でもそのためにマン振りしたらそれこそ商売しないと割りに合わないな。BCLラジオ洗い屋とか?それは年金バーサンの駄菓子屋レベルで辛い商売だな(^^;


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 ケースは丸洗い。消毒したのでなめても平気なくらいキレイになりました(^^ 元々それが目的だったので当たり前だが。一番気になるメタリック塗装のダメージは消えないけど、実は地のプラスチックがグレーなのであまり目立たなくなった。これは稍ラッキー。

 筆者が塗装の達人だったら一から塗り直す所だが子供の頃から塗装は苦手と言うか好きではない。恐らく「注意力」や更に大切な「根気」が足りないので自分で塗ったモノが気に食わない。職人的な作業は何でもそうかもしれないが、塗装のような作業は特に隅々までマメに注意が行き届くかどうかで優劣が決まると思う(失敗時の感想^^;)。ベテランのモデラーであっても素人目でちっとも上手く見えない人もいるし、やっぱりこれも生まれながらの才能だと思うよ。


★組み立て・テスト
 移転や天候不順でだいぶ時間が掛かったが、部品も短時間で全て乾いたし一気に組み立てようか。ハンダ付けする場所は臨時で作った。ハンダ机を買う計画は再移転のために流れたので段ボール箱と板で作ったのだ(^^;


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 このコンタクトのハンダ付けがポロリと取れてしまった。これはハンダ付けが難易度が高そうだ。ハンダが乗るかどうかも勿論問題になるが、それ以上の大きな問題はコテを当てすぎるとケースが溶けるところ。と言ってあまり熱しないと当然ハンダは乗らない。そのさじ加減が難しいのだ。一番良いのはコンタクトをケースから外す事だ。これが二度と外す事は無い前提で組み立てられているので難しいのだが。最悪で溶着してある場合がある。


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 緑青が付いた上に黒く変色していたテレスコピック・アンテナの根元部分とラグも酢やサンポール等の酸で洗う(後水洗注意)。ちなみにヒドイ錆ではない変色程度なら磨きは重曹を使う。市販ケミカル用品の錆取りのようにあとで変質しないのが良い。


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 御覧のようにキレイになった。このままだと時間の経過と共にまた酸化するので、接点になる部分には接点復活剤(=シリコーンオイル)を塗ってから拭き取る。


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 これも放置しようと思ったけどダメだよねえ?どう見てもまともに動作するイメージが湧かない。


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 面倒だがハンダ付けを剥がしてジャックを取り外してから酸で洗う。付けたまま強酸で洗うと二次災害の危険があるからね。で、外そうとしたらこれが極度に困難だった。まず無鉛ハンダで元々ダメなのに更に汚水をカブって「かつてハンダであった何か」になってしまっている。加えて基板が両面基板で放熱が良いのでなかなか溶けない。まるでマザーボードの電解コンを抜いている錯覚に捉われた。

 写真は剥がして洗った後だがこれで一時間くらい掛かっている。おまけにランドが一つ剥がれて、写真を撮った後で掃除していたら剥がれが二つになった(^^; 手前の一つは使われていないようだが、もう一つは一番肝心な音声出力線だったのでジャンパーを飛ばさねばならない。不可抗力とは言え非常にカッコ悪い。

 成り行きで220μF電解コン2本と10.7MHzのCFを抜いた。これは別の部品に置き換える予定。CFは狭帯域の1エレで電解コンは容量がピッタリな例の謎の中華固体電解を使いたい。


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 PVCのTCの内、右上のOSC?が完全に酸化しているが、回してみて容量が変化するようなら気にしない方向で(^^; この手のPVCは一応バラせるけど、素材も工作も貧弱なので元に戻らない可能性が高いから。ケースも勿論だが極小ネジもヤバゲで破損しそう。


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 あの緑青吹いて使えそうになかったイヤホンジャックも見た目は使えるように見えてきた(^^ 一応ここまででキレイにはなったものの、線材は前回のように全部オシャカなのでワイヤリングからやり直さねばならない。腐っていたオリジナルの線材は迷わず全部捨る。中身が腐った疑いのあるワイヤを流用すると原因不明の不調に苦しむ場合が多い。写真のように長さは気にせず先ずは基板に足を生やす。何か基板が剥がれてからヤル気を失い投げやりになってきているが…(^^;


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 基板パターンが剥がれてしまったので飛ばしたジャンパ。カッコ悪い。他人の作品ならボロクソにいう所だ(^^ ワイヤーのハンダ付けもオリジナルの基板裏チョン付けはマネしない。基板設計で本来接続するはずだった穴にキッチリ差し込んでハンダ付けする。この方が基板裏のチョン付けに比べ外れにくいし切れにくい。もともと製造時に「穴に入れるのが面倒だから」こうしているだけだろう。もっともチョン付けの方が最短距離になる場合もあるかも知れない。


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 SPのハンダ腐りも修正する。コイル側のハンダは触らなかったがダメならもちろんやり直す。SPのハンダも変質しコテを当てても溶けないし馴染まない。まずは腐りハンダを除去しないと何もできないのだ。


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 あとはケースに入れて多少余裕を持たせた長さに切ってハンダ付けする。まるでキットを組み立てるような事になり面倒くさいがブログ記事ネタなので我慢!(^^; 線材は全て日本メーカー製のものである。入手したのは前世紀だけど保存は良かったのか腐食はしていない。

 ワイヤリングが完成したところで電源を繋いでSWを入れたが全く音沙汰なし!何と言う赤っ恥。これだけ苦労して全くのスカとは…(^^; これはワイヤー配線をミスったのではないか?或いはSWの不良とか回路パターンの目に見えない断線とか?全体が腐食しているといくらでも失敗パターンが思い浮かぶ。このように修理初心者に一番勧められないのが全体・或いは部分が腐食したラジオのレストアだ。動けばアッサリだが動かない場合はトコトン動かないのでそれなりに経験が無いと原因を掴むのすら難しい。この場合はICラジオなのでTRディスクリートよりはまだ救いがあるが。何しろ粗ニー系ICは回路はほぼIC内なので僅かな電源ラインや信号ラインだけだから。致命的に壊れるのはICの脚が腐って取れた時くらいだ(もっともそれも直せない訳じゃない)。サッサと直したいけど長くなったので次号へ続く。


★続く
 今回で終了するはずだったのにまさかの次号送り(^^; さて本当に動くのだろうか?次号を刮目して待て。

実はこの修理作業は最初に行なったのは東伏見に於いて2020/02/25でそれが第一回の記事だ。二度目が練馬に移転当初の2020/06/25でそれが今回の記事だ。三回目の記事はこれから作業を行うのでまだ出来ていない。作業開始からまる一年の歳月が流れていることに驚いてしまった。移転のドサクサで作業が出来なかった時期が長いが一年かけて修理とは気が長い話だ。それはそうと部品は紛失せずに有るのだろうか…(^^;