この記事はレビュー記事でも懐古記事でも買い物ガイドでもありません。シロート向けの使い勝手などの一般的評価は書いていないので、ラジオ好きで超マニアックな常連以外はここでお帰りください(^^/~
全く個性が無い中華ポケットラジオ…ではない”TEKNOS RT-1”(^^;
外見的には個性の感じられない中華ラジオである。これの中の1台である。実はこの記事は去年秋に書き始めたのだが、タネを明かすのがもったいなくて年明けになったのである。それでは行ってみよう。
正面写真。TEKNOSというブランドの小型ラジオ。Yシャツのポケットに入る、RAD-F12×Nと同じクラスである。サイズは縦100.2×横50.3×厚み10.8mmだ。ジャンク品の多くに見られるメタリック塗装の腐食剥がれが見られるが、それを除けば特にダメージは無い。
AM/FMの2バンドだがFMの上の方にはTV(1〜3ch)バンドが存在する。小型ラジオでしかも横幅を一杯には使っていないのでスケールは非常に詰まっており同調はかなり困難だ。2022年現在はアナログTVは存在しないが、ワイドFMラジオとしてMW局の補完放送を受信できる。LEDは電源ランプであり同調用ではないのがもったいない。
裏面写真。電池は単4サイズで2本使用する。株式会社千住とあるがWebサイトを見ると、本業はOHMとかELPAと同じような家電製品の卸商社らしい。TEKNOSは自社のブランドである。
側面写真。右側に同調ダイヤルと電源兼バンド・スイッチがある。左側はSP⇔イヤホン切り替えスイッチと音量ボリューム、イヤホン端子が存在する。
さてこのラジオは外見的に大きな特徴がある。AM/FMの2バンド・ラジオでは当然存在するはずのテレスコピック・アンテナが存在しない。これは通勤ラジオなどによく見られるイヤホン・アンテナを採用しているためだ。そのため上写真のようにSP⇔イヤホン切り替えスイッチが存在するわけだ。この方式はコストダウンにもなるのかもしれないが、SPで聞く場合にもイヤホンが必要となるために家庭用には使いにくいだろう。
★動作チェック
テスト前までは何の変哲もないありふれた中華ポケットラジオだと思っていた。がしかし周波数範囲チェックでどうもおかしいと思い始め、YBS受信でその疑惑は頂点に達した。
=周波数範囲チェック=
MW下限:529kHz(規定520kHz)
MW上限:1663kHz(規定1650kHz)
FM下限:73.7MHz(規定75.0MHz)
FM上限:108.7MHz(規定109.5MHz)
*メーカー規定が不明のため粗ニーICラジオの規定
MWはバンドをカバーしているが下側マージンが全く無い。全体的に下に寄せた方が良さそう。FMは大体OKだ。
驚いた。このラジオは高感度ラジオなのだ。どのくらい高感度かと言うと粗ニーならば間違いなく-Sが付くレベル。少なくとも恒例のYBS受信だけならICF-S16と同等以上なのではないだろうか?今まで中華ラジオをたくさん見てきて、一部分でもソニーラジオを上回ったラジオは皆無に等しい。特に無銘ラジオに至っては全く無かった。その無銘中華ラジオでこのような高感度ラジオがあったとは未だに信じられない。どーでも良さそうなものでも色々見てみるもんだね。
FMはイヤホンがアンテナのタイプで、それの影響を受けるので感度は普通程度かな。それでもAMと同じくそこらの中華ラジオよりは性能が高く感じる。これは解剖が楽しみになってきた。
★解剖
この大きさで粗ニーに匹敵する高感度ラジオとは信じられないのだが、まあ開けてみれば結果は出るのだから焦る必要はない(^^
中華製ラジオはほぼ全てそうだが、裏蓋には特にトラップは無くすんなり開く。裏蓋を開けると直ぐにPCBが出現する。PCB裏には面付けタイプのICが見える。足の本数から言ってもソニー製に違いないだろう。
ラジオ用ICはSONY CXA1691BMだった。恐らく本物だと思うが、中華は偽物もあるから油断はならない。もっともこのSONY CXA1019/1619/1691系のICは高価ではないので偽物が出る確率は低いと思われる。
SW付きのVRのSWを押す爪が欠けている。当初は不具合かと思ったがわざと折っているようだ。かなり面倒な作業だと思うがSW付き以外の平型VRが無かったのだろう。
開けた時に直ぐに目につくコイルのようなものが気になったが、PCB名をも見たらHC999A/F-02となっていた。同じ工場の出身と思われるHC997の兄弟と思われる。
SPはコードレスホンなどに使われた40mmの超薄型品である。コーンは紙ではなくプラスチック製である。バネのように見えるコイルは、おなじみの腸のようなFM用のアンテナである。外部にはテレスコピック・アンテナは存在しない。
ダイヤル機構は最低の次くらいの簡易なもので、指針を一度抜いてしまうと組み立ての時には素手ではなくピンセットなどが必要となる。部品の実装はかなり汚く、エポキシ系の接着剤で汚く止めてあるが意図は不明だ。
FRAはHSDLの精密計測(笑)に拠れば4.1×9.6×38.3mm(フェライト指数は262)となっている。テスト時の高感度が信じられないような小型サイズである。キッチリと調整されればこの程度のアンテナでも感度が出るという事だろう。
FMの10.7MHzのCFはTOKEN製LT10.7A、CDはTOKENのJT10.7C1で、中心周波数は赤なので±0である。AMのCFはHLB465Bというもので(m)の文字はムラタ製のパクリだと思われるがメーカー名を示すのかただのマネなのかは不明だ。中心周波数は465kHzと完全なヨーロッパ仕様だ。
★終わり
これを書く前は30分で解析してジャンク箱に入れて光の速さで放出予定だったが予定変更で保存する事になった。もうちょっと詳細に性能を確認してみたい。
1691系ICは中華系のものでも結構実用的なものが
多いのです。
なぜなのかずーっと気になっています。
今回は同調インジケーター用機能があるICなのに
LEDが電源ランプ機能なラジオが意外と多いのも気になるのです。
何がどう面倒くさいのでしょうか。
中華系ラジオの奥は深いです。