HSDL.blog.jp

主にラジオを中心としたジャンク・各種実験の同人誌

RF-527

不動のRF-527(^^;;

この記事は、最低でも過去記事と「HSDL用語集」「HSDLラジオ用語集」を読んでいる事を読者の条件とする(リンク条件はこちらを参照)。

不動の昭和ラジオを何とかして動作させたい


不動のRF-527(^^;

 残念ながら懐かしの昭和ナショナルラジオは不動だった。不動原因は今のところは推定に過ぎないが、このラジオはAMのFEが逝かれている予想だ。AMのFEが逝かれるという事はFMのIFが逝かれるのと同義だ。つまりこのラジオの症状とピッタリ合っている。それを確定するためにはどうしたらいいか?ここでもう一度ちゃんと調査して振り返ってみよう。内容は重複するところがあるかもしれない。


rf527_20
 その前に基板写真を撮ってみた。部品の値が見えるわけでもないし番号があるわけでもないが矢鱈高画質になってしまった。こんな高画質は必要無いが趣味という事で(^^ いつものように撮影は100円ズームと、MCですら無い粗末な100円プロクサーNo.3である。コンデジと違って歪曲が皆無に等しいところがいい。

 それにしても昔のTRディスクリートのラジオは美しい。中華ICラジオとは全然違うね。壁紙にしても良いくらい見飽きることが無い。


★推理する
 基板はICラジオとは比較にならないほどゴチャついていて良く解らないのだがTRは全部で11個だった。

2SA564Q→2SA1015Y
2SA642(ランク不明)→2SD227とコンプリ
2SC1359B→2SC380TM-O
2SC1359B→2SC380TM-O
2SC1359C→2SC380TM-Y
2SC828Q→2SC1815Y
2SC828Q→2SC1815Y
2SC828Q→2SC1815Y
2SC828R→2SC1815GR
2SC945Q→2SC1815Y
2SD227R→2SA642とコンプリ

 右は置き換え候補だ。全交換などバカな事はしない。カネの無駄だし貴重なオリジナル性を損ねる。この中でよく解らない石は2SD227とそれのつがいの2SA642だけだった。これらはインドのメーカーのセカンドソース?しか見当たらない。2SD734、2SC1959、2SD467、2SC2497が互換らしいがそれもシラネー(^^; 2SD467というのを見た事が有ったかもしれない程度。まあデータは解るので大丈夫だ。そもそもAFは死んでいないと確信している。

=設計時の構成=
 ICラジオならテンプレが有るので回路図くらい書くけど、TRが11個もあるディスクリートラジオなんて回路図書いていたらいつ終わるか見当もつかん。


rf527_21
 これがブロック・ダイアグラムだ。AMはFMの第一IF以降を利用している(検波は独立)。AGCラインは簡易なフィードバックなので省略した。

FM RF-AMP:2SC1047
FM CONV:2SC1359
FM AGC:OA90
FM 1stIF-AMP&AM CONV:2SC1359
FM 2nd/AM 1stIF-AMP:2SC829
FM 3rd/AM 2ndIF-AMP:2SC829
AM DET&AGC:OA90
FM DET:OA90x2
1stDC-AMP:2SC828
2ndDC-AMP:2SA564
LED:LN23
1stAF-AMP:2SC945
2ndAF-AMP:2SC828
POWER-AMP:2SA642/2SD227

 FM-RFは設計では2SC1047となっているが、実際この個体に実装されているのは2SC1359だった。2SC1359の方が格下で性能がだいぶ違うのだが、2SC1359B→2SC1923Y交換もありか?

 FM/AMのIF-AMPも2SC829から2SC828にスペックダウンしている。2SC829は2SC0829と名前を変えて最近まで生きていた。2SC829の「FM・AMラジオのRF増幅、発振、混合、IFに最適」というベストの石に対し、2SC828は汎用小信号用のやっすい石だ(^^; つまり2SC1815みたいな奴。

 世間の情報を見ると2SC828が死亡するような症例は見つかっていない。だが2SC1359のhFEが低下した話はよく見た。怪しいのはコイツだな。この構成を見ていたらもう何か絶対怪しいとしか思えないところが判ってきた。


rf527_22
 もうこれしかないだろう!というのがこのFM 1stIF-AMP&AM CONVの2SC1359だ。AM・FM両方兼務で激務をこなしているコイツが死ねばこのラジオは一発でほぼ何も起こらなくなる。コイツが犯人か確かめるために電源を入れて電圧を測ってみるか?ちなみにコレクタ5.1V、ベース1.2V、エミッタ0.55V、Ieは0.5mA辺りで正常だ。

 当初よりこのラジオはIF以前が死んでいると確信していた。何故IF以前を疑うかと言うと、電源を入れる時にSWの音と一緒に微かにSPからポツッという音が聞こえるのだ。これはAF-AMPが生きている事実に他ならない。そしてもう一つは同調指示ランプが全く反応しない事だ。これはLEDを駆動しているドライバAMPに信号が来ていない事を表している。加えてIFのノイズが全く聞こえない事も重要だ。結論としてこのラジオはIF以前が怪しい事になる。そしてAM・FM共に動作していないのは共通回路が死んでいるという事でFMのRF-AMPとCONVは無実だからMW-CONV(兼FM-IF)とIFしか犯人はいない。石が劣化すると影響が出るのは発振だろうね。


★残る問題
 電解コンをどうするか?このラジオの発売を1976年としても今年(2019年)で43年が経過している。電解コンは当然ながら期限切れだ。但しラジオ程度の直流回路なので不具合が出ていなければ換えなくても問題ない。以前見たICR-S8のように発振気味なったら換えないと拙い。この個体の場合はまだ動いていないので動いてから考えることにする。もし期限切れで不具合が出るとしたら恐らく低いところで発振するはず。


★続く
 長くなったので作業は次回に回す。簡単な故障なのに分解(これは昔から嫌い)とハンダ付けがイヤになって全然進まねー(^^; 最近は故障個所が判ると興味が無くなるというかどーでも良くなってくるんだな。でも予定では次回で完結します。いやTR一石だから絶対に終わらせねば。


★おまけ
 発売年の件だが、下リンクのリアルタイムでこのラジオを買って使っていた人が1975年発売と書いているので間違いなかろう。サービスマニュアルが1975年、グッドデザインが1976年で、リアルタイムユーザーが1975年に買っている。これで発売年は1975年で確定ね。1977年発売はどこから出てきたの?それは自分が買った年ではないのか?(^^;
http://yumetsune.o.oo7.jp/details11127.html

不動のRF-527(^^;

この記事はレビュー記事でも懐古記事でも買い物ガイドでもありません。シロート向けの使い勝手などの一般的評価は書いていないので、ラジオ好きで超マニアックな常連の変人以外はお帰りください(^^/~

この記事を読むにあたっては「ラジオを製作・組立した事がある」「ラジオの回路に深い関心がありスーパーヘテロダイン方式について理解がある」「感度・選択度・安定度・多信号特性について其々完全に理解している」「HSDL用語集を全部読んでいる」「前回までの記事を全て読んでいる」を条件とする(リンクについての条件はこちらを参照)。

どう見てもジジイの遺品としか思えない不動の昭和ラジオ(^^;


 マネ下ラジオも20世紀終盤から主にオワタ音響の代理設計・生産?に成り下がってしまったみたいで、オリジナル設計・製造好きな筆者としては面白くない…って事も無いけどやはりマネ下オリジナルも見たいのである。そんなある日、どう見てもディスクリート時代のナショナル製品を見つけた。壊れているけど何とか買えそうな価格だったのでゲトしたのは言うまでも無い。ちなみにカテゴリの「レトロラジオ」は昭和時代というか80年代以前に製造されたラジオを指す。


★素性
 検索すると上の方に出てくるブログに1977年発売と書いている人がいたので一旦信用してしまったが、実は1976年にグッドデザイン賞を受賞している。まだ発売されていないモノが受賞できるわけは無いので1977年発売は全くの出鱈目だ。

 それどころか販売店・修理店向けのテクニカルガイドが昭和50年12月の日付になっている。1975年12月には既に発売されていたのだろう。イソターネットの記述を直ぐに信じてはいけないと再確認した。上のブログの影響で1977年発売と書いてしまっているブログがあったので悪性の黴菌みたいに間違いが繁殖しつつある。このようにデマや間違った知識が堆積していくのだな。確かなものはカタログなどメーカー発表か公的な記事しかないと考えた方が良い。

 カタログ仕様でも同調指示以外の機能も何も付いておらず、廉価な大量売り用のラジオだったのだろう。もっともそんなモノでも8900円もしたのだが…(^^; 当時のゼニの価値からすればマン振りだわな。80年代までのマネ下ラジオを殆ど触った事がある筆者的にはこのラジオも見た気がするが、少なくとも電源を入れて使った事は無いと思う。エントリーモデルは全然眼中に無かったというのが正直なところ。けど今見るとエントリーでもかなり骨っぽいのだ。


★外見
rf527_01
 何とかこのラジオの「内面」を表す写真を撮ろうと思ったが失敗した(^^; 厚ぼったくて重い昔ならではのラジオ。


rf527_02
 裏の銘板だ。松下電器産業株式会社も死んでるし、ナショナルハイトップ乾電池も死んでいる。ついでに冥土インジャパンも死んでいる。


rf527_03
 外観の瑕疵は左下隅が割れていること。これは落としたのだと思っていたがそうではないみたいだ。


rf527_04
 上で「厚ぼったい」と書いたが、それはこのSUM-3電池4本に依るところが大きい。今のICラジオでは考えられないくらい大食いだ。


rf527_05
 それを補う意味でACアダプター端子が付けられている。これは非常に助かる。


rf527_06
 操作できるのはモードSW、音質切り替えSW、同調ツマミ、音量調整VR兼電源スイッチだけだ。


rf527_07
 で、売り物は同調指示LEDだけ。今なら980円だろうが万近い価格だったのだ。ところでこの同調指示ランプは実際は夜になるとほとんど役に立たなくなる。選択度が低いのでどこが隣の局なのか分らないのだ。信号強度も上がって付きっぱなしになる。介護が必要なジジババにはそれなりに支持?は集めているけど筆者の診断ではナンセンス機能の一つと言える。やっぱラジケーターだよな(^^

 見ているだけではつまらないのでACアダプターを繋いで電源を入れる。しかし全く音は出なかった。電源SWを入れるとSPからプツッとノイズが聞こえるので電源は入っているようだ。やはり壊れているのか。直すのも面倒なので捨ててしまおうと考えたが、部品代としては些か高過ぎる価格なので躊躇する。まずは開けてから身の振り方を考えよう。


★バラし
rf527_08
 さて動かないのでバラしてみよう。TRディスクリートなので故障原因の確定は十倍くらい(HSDL推定)大変だ。実はこのラジオはネジが使われていなかった。粗ニーならともかくマネ下にしては大胆な設計だな。ネジを探して電池ボックス内のシールまで剥がしちまったよ(^^; ICR-S8みたいだがアレよりはスマートとは言えない。この角が割れているのは実は落としたのではなく割る時に破壊してしまったんだな。


rf527_09
 ここにも冥土インジャパンか。書かなくても判るよ。この時代は海外産の方が少なかったのだから。70年代後半に初めて海外製造を見て「オッこれ外国製だよ!」って驚いた記憶があるから。ちなみに最初に見たのは東芝の半島製だったかな。ここにもちゃんと部品番号が書いてある。マネ下はこの辺り厳しいのか?上場企業なら当たり前か。でもうちはテキトーだったような(^^;


rf527_10
 ギャー!虫の蛹だよ!何とも外見に相応しいものが出てきやがった。これを使っていた奴の人格がここからも想像できるな。ここはシールドケースに囲まれており、ゲルマニウム・ダイオードも見えるから恐らく検波部だろう。ちなみに蛹の抜け殻は他にもう一つあった(^^;


rf527_11
 とにかくデカい電解コンが多いので驚く。自社製品の消費のためか?イヤイヤ電解コンは本体の製造じゃないからあまり関係無いか。もしこれらの劣化が不動の原因だったら泣けるな。まあ電解コンが原因で全く動かなくなることはないんですが。


rf527_12
 注目のフェライトロッドだが…意外と短い…これだとイマドキの製品と変わらんな。この時代の粗ニーならもっと長いのが入っていた。感度も低そうな気がしてきた(^^; けど実際は径が10φと太いので、例の感度ランキングは結構上の方だった。


rf527_13
rf527_14
 マネ2の2SC828と2SC1359が主に使われている。これらの石はパッケージに丸みがあるのが特徴だ。他に丸みの無い2SC945が一つだけ見える。検波以降の石はこの際どうでも良いので省略(^^ ところで2SC828や2SC1359って不良が出るのか?2SC828はオリジナルを持っているが1359の方は使った事が無い。これは→2SC710⇔2SC380TMで置き換えられるので全く困らない。


rf527_15
 828を探したら2本しか無かった。一体何に使ったんだろう?何も製作していないはずなのに(^^; ちなみに互換表に拠れば2SC1815、2SC945、2SC458、2SC1740といったおなじみの面々に交換できるらしい。2SC1815が使えるのは嬉しいが、恐らくhFEは下げないと差し替えは無理だろう。GRではなくYが欲しいな(…ってまた買うのかよ^^;)。

2SC828ランク:Q=130-260、R=180-360、S=260-520
2SC1815ランク:O=70-140、Y=120-240、GR=200-400、BL=350-700


rf527_16
 一本だけ2SC945発見。何故だろうか?828と大差無いのに。これもオリジナルを持っているが交換はしない。


rf527_17
 2SD227?AFの石である。コンプリの相方が見当たらないが…?志村ー!隣!隣!


rf527_18
 三罪のマーク入りPVCだ。


rf527_19
 基板を外そうと思ったら…ウワッこれ不用意に開けたら拙い奴では…。何となく危険を感じたのでバラさず故障原因を推理したい。もうこれしかないと思ったところで初めてバラす。


 よくもまあこんなに無駄の多い商品を作ったもんだ。当時はそれだけラジオが高く売れたという事だろう。筆者もまだラジオ番組を聞いていたからね(^^ 古き良き時代の製品である事には間違いない。


★不動原因の推理
 このラジオはこの時代の一般的なラジオと同じくAMとFMのFEが独立しており、IFが共通になって検波が再び独立し、AF以降は再び共通のタイプだと思う。AMとFMが同時に死亡したという事は共通の部分が死んでいるという事だ。しかしそれはAF以降ではない。何故ならこれの売り物の同調LEDが点灯しないからだ。両方が故障している可能性は皆無ではないが、普通はどちらかが壊れた時点で使用を中止するのでその可能性は低い。という事はIF以前が原因とみられる。IFTに回した跡があるのが気になる。実は前所有者が再調整しようと思って弄って壊したのかもしれない。頭死老にラジオの調整・修理が出来るなら修理屋などは要らんわな。

 という事で次回はまずIFから見ていきたい。さっぱりノイズすら入らないという事でIFTの断線も疑われるな。


★続く
 何とか生き返らせて手を入れて「完成直前に完全爆死→日の出町最終処分場へ!」がHSDLの物件の定型だ(^^ それには何としても一度は生き返らせなくてはいけない。次回は今回の観察結果を元に更に推理してみたい。

記事検索
名無し・通りすがりは即削除
QRコード
QRコード
月別アーカイブ