この記事は「ラジオを製作・組立した事がある」「ラジオの回路に深い関心がありスーパーヘテロダイン方式について理解がある」「感度・選択度・安定度・多信号特性について其々完全に理解している」「HSDL用語集を全部読んでいる」「前回までの記事を全て読んでいる」の条件を全て満たしていることを読者の条件とする(リンクについての条件はこちらを参照)。

meito TR400と称する謎のラジオ!キットなのか?(^^;


 meitoってなんだよ!名刀か?いやいや、meitoと言えば協同乳業。その協同乳業の東京工場はHSDLの近所である保谷市・新町にあった(現在は日の出町に移転)。以上誰も知らないどーでも良い豆知識でした(^^ 閑話休題、このラジオは2019/09/22に入手したもの。まだこの頃は8%消費税だったんだな〜と懐かしんだりして。


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 何となくキットのように思えるラジオだ。事実ウェブ上の情報からもどうもキットらしいという事が判った。それなら納得だ。キットのラジオって意外と中身イイものだったりするのだが期待していいかな?


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 ヒドイ電池ボックスだ!開かねーよ!(^^; そもそもこんな細長いのを横に押させるなよ!割れるかと思った。イヤいずれ割れそうな気がする。裏蓋を開けた方が良いかもしれないね。

 電池を入れて電源を入れてみた…動いた。感度ひっくー!(^^; 7大ローカルすらロクに受信できない。これはキットだから組み立てただけで調整していない・或いは失敗しているのではないかと想像する。いやそうであって欲しいと願いたくなるくらい低い。またダイヤルと周波数スケールが全く合っていない。この手のスケールは滅茶苦茶なのは普通だがそれにしてもヒドイ。これでは受信テストにならないので早速解剖してみよう。買い物記事にも書いたがTRディスクリートと予想されているがネット情報ではICラジオとの情報もある。ワクワクするね。


★解剖する
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 裏蓋にネジは無いので直ぐ割れた。何とICとTRのハイブリットラジオでした!これは斜め上で予想外だったな。チラ見でトランスが見えたからTRディスクリートと判断したのだが。基板のネジが一部しか止めていないのが気になる。


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 しかもICは粗ニーのマイナーなCXA20111だった。こんな石を使っているキットなんて初めて見たよ。これは統合チップではなくAFアンプは入っていないICなのでTRディスクリートでアンプが組んである。キットならではの無駄の多い構成だ。通常の製品はAFをICにするからね。

 しかしICラジオとは言えこのジャンパの多さはイヤになるな(^^; プリント基板の意味があまり無いんじゃないか。しかもキット製作者が短ジャンパをU字型で長配線してやがる。基板でどんなに発振防止策を講じてもこれで水の泡だ。


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 まずはこのフェライトロッドが目を引く。どう見ても日本国産だね。キット用の安物だがそれでも中華製とはコイルの巻き方からして違って見える。サイズはHSDLお得意の精密計測(笑)で10.0×90.1mmの丸棒だった。メーカーは知らないけどサイズも正確だな。フェライト指数は901となりRF-527やICR-S1を越える8位となる。現在の売り文句だと「大型フェライトロッド・アンテナで高感度設計」となる(^^

 このようにフェライトロッドのサイズは現在では高感度ラジオのサイズであり、ICラジオの当該機の低感度は明らかにおかしい。これは組み立て後の調整が上手く行っていない事を示している。


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 FMコイルはコア入りボビン!調整しやすくていいなあ〜でもキットならではの無駄だね(^^; PVCは現在は工具屋をやっているMARVEL製。IFTは何処かよー分からんけど日本製。ついでに電解コンは電子部品部門を太陽誘電に売却して不動産屋に転進したSHOEI。もうなんか懐かしの日本メーカーのオンパレード。ホーマーやチェリーのラジオキットにはこんなのが入っていたっけ。


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 455kHzのCFはムラタ純正のSFU455Aだった。これはIFT仕様なので本来はSFU455Bを使わなければならないが無かったのかもな。選択度は現代的。


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 10.7MHzのCFはこれもムラタ純正のSFE10.7MSだった。MS2か3かは分らないけど普通に考えれば帯域は230kHzだろう。これも現代的。まあICラジオだからね。


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 AFパワーアンプは何と2SC945のプッシュ(^^; 今で言えば2SC1815でP-Pを組むようなものだ。ドライバも同じ2SC945(ネコ電製)だった。トランスはサンスイっぽい日本製。


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 このSPは昔からマーク知らないのでどこ製か分らない(台湾製?)がコイル部分が大きくて悪くないと思った。実際音はトランジスタラジオの音だが、それは回路構成が945のP-PだからでSPのせいではない。SPグリルもパンチングメタルだしね。


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 ハンダ付けはアマチュアとしてはまあまあか。信州のおばちゃんたちはこの程度の腕でPCモニター生産してたし(^^; でも「もやしジャンパ線」はやり直したい。ちなみにプロは速さなのでハンダ付けだけ見ても熟練は判らない。この世界、上手けりゃ許されると思ったら大間違い!(^^;


 全体的に筆者には見慣れた懐かしの日本メーカー製パーツが多用されており堅実だ。基板はアレだけど調整さえちゃんとすれば高性能になるハズだ。当該品はその調整が全然ダメなのだが…。


★調整
 まずは周波数合わせだ。このラジオの基準が判らないので困ってしまうが、下側517kHz±2kHz上1650kHz±5kHzとした。いつもの通り周波数スケールは無関係にPVCの羽根位置だけで調整する。羽根が一杯に入った時が下限、完全に抜けた時が上限である。下限はコイルのコアで合わせ上限はPVC付属のTCで合わせるだけ。

 次にトラッキング調整だが、今回は試しに下550kHz辺りで合わせてみた。特に理由は無いがどうも以前の620kHzだと下限の感度が下がるので気になってきた。上はいつもの通りに1400kHzで合わせている。上は元々Qが低いのであまりシビヤーではない。厳しいのは下の方だけである。これで「この構成で出そうな感度」になった。


★テスト
 このラジオがいつ頃の製品なのかは分からないが、今回調整が終わってこのラジオは初めて完成したと言える。もちろん完成者は最終調整したオレだからねσ(^^ それはさておきテスト行ってみよう。名刀の切れ味は如何に?

△ 639kHz:静岡2(PB)
△ 729kHz:名古屋1(CK)
△ 765kHz:YBS大月
△ 882kHz:静岡1(PK)
△1062kHz:CRT足利
△1197kHz:IBS水戸
△1404kHz:SBS静岡 ;RFと混ざって聞こえる(^^;
△1458kHz:IBS土浦
△1530kHz:CRT宇都宮
△1557kHz:SBS熱海

 さすがに(今では)大型フェライトロッド・アンテナだけあって高感度だ。選択度はあまり良くないがムラタ純正は中華SFU455よりは良いようで全局受信できた(但し混信が無いわけではない)。せめてこのくらいの性能のラジオを売りだせば性能だけで売れるのだが。


★終わり
 無名なラジオはPVが増えなくて空しいので一気に一回で終わらせてしまった(^^; しかしこのラジオはキットなので改良の余地が有って面白い。部品も日本製なので皆様も見つけたら買って弄ってみると良いでしょう。但しトーシロ製作のはハンダ付けやワイヤリングをやり直した方がイイかも(ヘタに弄ると発振しまくり^^)。